永遠の0  永遠に語り継ぐべき名もない人々 | 面怒宇九斎のブログ

永遠の0  永遠に語り継ぐべき名もない人々


「靖国会おう」と言って散って行った特攻隊員の話を思い出し、映画の感想記をアップする前に「A級戦犯合祀」以来の靖国神社への苦言を先に書かざるを得ないと昨日は思ってしまった。

戦争は二度とご免だ…誰もが思う。その一方で憲法9条があれば国防など議論に及ばずと言った平和ボケの論にも与する気はサラサラ無い。ただ、戦争になれば名も無き人々に起こる不幸は多くある。

二度と戦争は起こしたくないし、仕掛けられたくも無い…そう思わせる映画だ。



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【勝手に評価】 ★★★★★(今年度No.1)

【ストーリー】
2004年。佐伯健太郎(三浦春馬)司法試験に落ち失意の日々を過ごしていた。祖母・松乃が他界し葬儀に参列するが、そこで祖父・賢一郎(夏八木勲)とは血がつながっていないことを知る。
血縁上の祖父は、松乃の最初の夫で、太平洋戦争時に零戦パイロットとして出撃、終戦間近に特攻隊員となり散った宮部久蔵(岡田准一)という人物だった。健太郎は久蔵がどんな人物だったか調べようと、彼のかつての戦友を訪ねてまわる。
しかしその先々で、海軍一の臆病者といった手厳しい評判を聞く。類まれなる操縦センスを持ちあわせながらも、敵の駆逐よりも生還を第一に考えていた。それは、久蔵が妻・松乃(井上真央)と娘・清子とかわした、家族の元に生きて戻るという約束があったためだった。
それならなぜ久蔵は特攻の道を選んだのか。やがて久蔵の最期を知る人物に行き着き、健太郎は久蔵の懸命な思いを知る…。


予告編です。



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【感想】
この映画は特に若い世代の方に観て欲しい映画だ。


私の相棒は年間200本以上の映画と、200冊以上(訂正:120冊の誤りです)の本を読む人間だ。ブログへの映画評を書く気が起こらない。それ程今年は映画不作の年で…、私は例年程は映画は観ていないのだが、結構映画好き・読書好きを自認している。

その夫婦が揃ってベストセラーと言われた小説「永遠の0」には「?」で、「それ程の小説なのかな~」と思ったものだ。決して天邪鬼でもないのだが…。

そんな訳で映画化されても、最初は余り興味を示さなかったのだが、色々な所で評価の高い作品なので足を運んだ。

行って良かった…小説を遥かに上回る出来の映画で、途中から涙が止まらず困った。

先ずキャスティング…誰もが適役だったが、

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NO,1は岡田准一…V6のアイドルなんて言わせない…立派な役者になったものだ。今年は大河ドラマの黒田勘兵衛で役者として不動の地位を築くのではないだろうか、特に一時帰還して妻と娘に逢いに帰宅する軍服姿の凛々しいこと。


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妻松乃役の井上真央の可憐な新妻役に主人公の「生きて還る」との思いが重なる。


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そして、やくざの親分(景浦)の田中泯は秀逸で彼の腹の底から絞り出す声色は兵役時代の重さを改めて思い起こさせる。そして兵役時代の新井浩文は相変わらずひねくれ役に、両者共にぴったりの景浦役のキャスティングだ。

田中泯の景浦が健太郎に「その日本刀は血を吸ったことがある」との言葉は、戦後松乃が窮地に立たされた時の話を大石に話をする、誰か知らない人に助けられ…という話に繋がり景浦の宮部への想いがズシ~ンと来る…良いな~この脚本。

相次いで持ち込まれた映画化の話を断っていた百田尚樹が山崎監督の脚本を読んで映画化を快諾した気持ちが良く判る。

祖父の真実の姿を知りたいと始めたものの、腕は確かだが敵から逃げ回り「生きて帰る」と言い切る宮部を、同僚や上官から「臆病者」と唾棄される…そんな話にウンザリしかけた矢先に、元部下で末期ガンの井崎(橋本功)から聞かされた宮部への感謝の気持ちから真実の祖父像に近づいて行く。

末期ガンで余命3ケ月と宣告されたのに、それから6ケ月が過ぎても生きていたのは、私から貴方たち(お孫さん)に宮部さんの話をさせるためだったのですね…との井崎(橋本功)の述懐に、もぉ涙が止まらない…。

話の展開は小説通りだが、小説が戦争の史実をなぞる様に記述するが映画の世界では思い切りその部分はカットし、宮部とそれを取り巻く人間ドラマに仕上げた山崎貴監督の脚本が素晴らしい。

映画は大分前にクランクアップしていたらしいが、大分編集に手間ひまをかけたのだろう。それが話をスンナリ入ってくる。特に小説では何故生きることに拘った宮部が特攻に志願したのか、表現不足の様な気がしてならずそれが小説への不満となっていたのだが、映画ではそこに行く心境の変化が画面と岡田の演技で納得行くストーリーで飛び込んできた。

山崎監督は「三丁目の夕日」で見せてくれたCGを零戦や空母など戦闘場面でも、実写と見間違うばかりの違和感の無い映像を提供してくれたVFXというのだそうだが素晴らしい出来だ。

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健太郎が合コンで特攻とテロを同一視する友人に「特攻はテロと違う」と叫び席を立つ姿を見て、若い人にこそ観て欲しい映画だと思う一方、戦争は断固反対だが今の若者は自衛隊に入隊を義務化させたいと思ってしまう。

「必ず帰ってきます」と松乃に言った言葉を宮部がどの様にして守ったのか…それは人と人との繋がりの様に思える。

祖父賢一郎が松乃の柩の前で泣き崩れる姿は何故か、そして祖父・賢一郎が何故松乃と結ばれたかが映画は丹念に語りかける様に描くのだ…。

祖父大石役の夏八木勲はこのクランクアップ後に亡くなっている。合掌


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映画が終わり、エンドロールになれば大概の人は席を立ってしまうが、不思議と立ち去る人は少なくエンドロールを見入っていた。そしてその時に流れるサザンオールスターズの「蛍」いいですね…。その一部をどうぞ!








【お薦め度】 ★★★★★(文句なしのお薦め品です)