※昨日の続きです。
 よかったら前の日の分からお読み下さい。



『コクリコ坂から』の監督は、『ゲド戦記』に続いて宮崎吾朗だった。
鈴木Pによると、吾朗監督の起用は本人の希望とのことだ。

しかし、不思議なのは鈴木Pがそれを了承したことだ。
昨日の日記に書いたように、「宮崎の息子の映画」というのは
とてもキャッチーな売り文句だ。
でも、それが使えるのは一度っきり。
「ゲド戦記」で正体がばれた今ではなんの意味もない。
いや、むしろ「ゲド戦記」によるネガティブキャンペーンですらある。
今回は興行的にももちろん、
内容でも絶対に評価されなければならないのだ。

ジブリがここまで大きくなれたのは、作品のクオリティに対する信頼である。
興行的には振るわなかったけど「ナウシカ」「ラピュタ」等が
コツコツと信頼を積み上げてきたからこそ
今日のジブリは存在しているのだ。

その信頼を「ゲド戦記」に続いて
2度も裏切ることとなればジブリとしての価値も下げてしまう。
鈴木Pは、なぜそんなリスクを選んだのだろう?

とても不思議だ…。


ただ、結論から言うと
「コクリコ坂から」はとてもよく出来ていた。
ジブリらしく60年代を丁寧に描いた恋愛作品だった。

吾朗監督の成長と言えなくもないのだが
そもそも宮崎駿が書いた脚本がいいのだ。
1960年代の日常をリアルに描くことは
非日常の「ゲド戦記」の時と比べてとてもラクだと思う。
奇をてらった演出は必要はないのだ。
つくづく、ド新人監督にいきなりファンジーなんて
やらせちゃダメだと思った。

正直、センスみたいなものは感じなかったけど
彼なりのベストは垣間見えた。
だからといって、今後も作り続けて欲しいとは思わない。
もっと出来る若手はいくらでもいそうな気がする。
続けるのだったら、まずは短編でコツコツと経験を積むことだが
それよりも若い作家に幅広くチャンスをあげて欲しい。