はじめに

研修医向けの教科書を買ったものの、どのように使えばよいのか迷うことがあります。最初から最後まで通読するべきなのか、それとも必要なところだけを調べればよいのか。

私は、すべての教科書を同じ方法で使う必要はないと考えています。それぞれの役割に応じて、「読む本」と「引く本」に分けています。

「読む本」は、ある程度まとまった範囲を順番に読み、知識や考え方を体系的に学ぶための本です。一方、「引く本」は、病棟や救急外来で生じた疑問を解決するために、必要な項目を確認する本です。

「読む本」と「引く本」は役割が違う

私にとって「読む本」は、臨床で必要となる基本的な知識や考え方を、全体の流れの中で学ぶための教科書です。最初から順番に読むことで、個別の知識だけでなく、診療の土台となる考え方を身につけていきます。

一方、「引く本」は、目の前の患者さんについて生じた疑問を整理するための教科書です。すべてのページを読むことより、必要なときに必要な情報へたどり着けることを重視しています。

どちらかが優れているわけではありません。大切なのは、その教科書の特徴や自分の目的に合った使い方を選ぶことだと考えています。

『内科レジデントの鉄則』は繰り返し読む

私は『内科レジデントの鉄則』を「読む本」として使っています。約4か月で1周するペースで通読しており、現在は3周目です。

一度ですべてを覚えることを目指すのではなく、一定のペースで繰り返し触れることで、少しずつ知識を定着させようとしています。通読する本を何冊も抱えると継続が難しくなるため、「読む本」はある程度絞っています。

私にとってこの本は、疑問が生じるたびに一部分だけを確認するというより、内科診療の基本を繰り返し学ぶための教科書です。

『総合内科診療マニュアル』は病棟で引く

『総合内科診療マニュアル』は、主に病棟で生じた疑問を調べるために使っています。

例えば、患者さんの貧血について鑑別を確認したいときに、該当する項目を開きました。実際の診療では、疾患について広く勉強するだけでなく、目の前の患者さんについて何を考えるべきかを整理したい場面があります。

そのようなときに必要な項目を引き、鑑別疾患や確認すべき内容を整理します。実際の症例と結びつけて読むことで、そのとき必要な知識を具体的に学べます。

『当直医マニュアル』は救急外来で引く

『当直医マニュアル』は、主に救急外来で使っています。

救急外来では、限られた時間の中で鑑別疾患を挙げ、必要な検査を考えなければなりません。その際に、自分の鑑別に抜けがないかを確認したり、必要な検査を調べたりするために該当項目を開きます。

もちろん、緊急性の高い患者さんでは、初期対応と指導医への相談が優先です。そのうえで、追加で考えるべき鑑別や検査を整理するために使います。教科書だけで診療を完結させるのではなく、診察や指導医への相談を前提に、自分の思考を補う手段として利用しています。

すべての教科書を通読する必要はない

教科書を使って学び続けることは、医師として必要だと思います。しかし、教科書を活用することと、すべての教科書を通読することは同じではありません。

体系的に学ぶのに適した本は、時間を決めて繰り返し読む。病棟や救急外来で生じた疑問を解決するための本は、必要な場面で引く。このように役割を分けることで、それぞれの教科書を学習や診療に結びつけやすくなります。

新しい教科書を使い始めるときは、「この本は読む本なのか、引く本なのか」を考えるようにしています。「引く本」であれば、病棟、救急外来、外来など、どの場面で使うのかまで決めておくと、開くタイミングも明確になります。

まとめ

私は、教科書を「読む本」と「引く本」に分けています。

『内科レジデントの鉄則』は、約4か月で1周するペースで繰り返し読む。『総合内科診療マニュアル』は、病棟で貧血などの鑑別を確認するときに引く。『当直医マニュアル』は、救急外来で鑑別疾患や必要な検査を整理するときに引く。

今回紹介した分類は、あくまで私自身の使い方です。同じ教科書でも、研修環境や学習目的によって適した使い方は変わります。

何冊読み終えたかではなく、それぞれの教科書から何を学びたいのかを考え、目的に合った使い方を選ぶ。得た知識を実際の診療に生かすことが、教科書を利用するうえで大切だと考えています。