乳がんの手術を終えて、医師からリンパへの転移もなく、ガンは全部取り切った。早期がんでガンの顔つきもいいと言われた。これからは放射線治療と女性ホルモンに影響されるガンなのでホルモン剤の投与を10年行う。
医師に言われるがまま、毎日放射線治療に通い、毎日半分切り取られたオッパイに、放射線を当てられた。
私はこの病気から何を教わるんだろうか?凪は悶々と考えながら俯いて背中を丸めて歩いている。靴はローヒールのサンダルで裸足の足は滑って歩きにくい。しかし、そんなことは気にせず、歩いて入るけど意識は全く別の空間にいた。
治療の帰り道、突然、雨が降り顔を上げると
「夏到来!かかとの角質を取ってサンダルを楽しみませんか?」という看板が目に入った。
そして、その続きを見て、ハッとして足を止めた。
「踵や足の爪、しっかり洗ってますか?踵の角質には邪気が溜まります。人間関係で悩んでいませんか?悩みを解消するフットケアを受けてみませんか?」
女性の美しい足の写真のポスターの横にこんな文句が書いてある。
サロン名は、美しいかなで「たまゆら」と書かれている。ドアノブにはかわいいカゴがぶら下がっており、中にチラシがあった。
そこからチラシを一枚もらうと足早に近くのスタバに向かい、そこで貪るようにそのチラシを読んだ。
「足には、あなたの生きてきた証が刻まれています。
歩き方、姿勢であなたの身体の重心の置き方が変わります。その重心の置き方は足の裏を見ればわかります。足の指、爪、足の角質、タコ、魚の目などのトラブルや変化は全てあなたの生き方をサポートしてくれた足からのメッセージなのです。
そんな足の声をしっかり聞いて、悩みから解放されて生まれ変わりましょう。そのお手伝いを当店で致します。
フットケアサロン たまゆら 」
凪は「これだ」
と、確信した。
さっそくLINE登録して予約を入れた。
程なくしてLINEに予約完了の返信が来て、その後オーナーからの挨拶文がきた。
「片倉 凪様
この度は当サロンへのご予約ありがとうございました。
当店では初回、お客様のお話を伺い、足の状態のカウンセリングを行います。
何か、お困りのことがございましたらLINEでチャットも可能でございます。ご利用くださいませ。
たまゆら 店長 井上 君香 」
思い切った店の宣伝をしていたオーナーの名前を知る事で少し安心感を持った凪はチャットをしてみようと思った。
凪は、夢の中で見たミーの存在も気になっていた。
この人にならこの不思議な話ができそうだと、考えた。
不思議は、不思議を引き寄せる。 しかし、その不思議な出会いですらも
本人が鈍感であっては叶わない。苦しみから解放されるためにはその苦しみの正体を知ってアンテナを合わせていく必要がある。
そこに辿り着くまでが長いのだ。