本当の自分を見てしまったのかもしれない。

誰にも知られたくない、

というか自分が一番知らない本当の凪の姿を見てしまったのかもしれない。

でも、不思議と心は落ち着いていた。

安心して穏やかな優しい気持ちになっていた。

一度は、拒否したけど本当はあの子に会いたかったんじゃない?

やっと会えたんじゃない?

とも思っていた。

そんな時だった。

凪は健康診断で乳がんの疑いあり。

との連絡があり、精密検査を受けた。

何度もマンモグラフィーや、MRIなどの検査を経てついに医師から衝撃の結果を聞いた。

右乳がん。ステージ1タイプはホルモン依存性のガンでこれから手術、放射線治療、ホルモン剤の投与をしましょうという話だったが、凪はずっと泣いていた。

検査の結果が出るまでの長い時間持っていた緊張感が一気に緩んでしまったのだ。

53歳にもなって泣いているおばさんは、まるで少女に戻ったように医者に甘えていた。

泣くだけ泣かせて欲しい。

今日だけ、思い切り甘えたい。

その後は頑張るから。

凪はその日から3日も泣いていた。




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