一つ邪気がなくなった。
助けてくださいの声がどこかに届いたのだ。
どんな邪気だったのかはわからないが、凪は確実にわかった。
助けを求めると、楽になるんだ。
助けを求めるというのは人に助けを求めるのではなくて、自分のパニクってしまった思考に一撃を加える事だ。
助けて!
と叫ぶとバグが収まるんだ、、、
この気づきは凪にとってとても大きな収穫だった。
それから凪はどうしようもなく寂しかったり、孤独だったり、不安に駆られると
助けて!と思うようになった。
そうすると、凪の思考を混乱させていた邪気がスッと消える。
魔法の言葉は
凪の心の凸凹をヤスリで削っていくように、だんだんと滑らかになっていく。
そんな変化を感じていた。
もう一つ。
凪には、若い時から信仰心があった。
優しかった父親しか、凪を守ってくれる人はいない。
その父は、すでに亡くなって仏様になっている。
だから、仏壇を大切にしていた。
お父さんが生きていたら
こんなに辛くなかったんだろうな。
お父さん、何故死んでしまったの?
お線香を焚きながら手を合わせた事も何度もある。
変化を感じてから父の仏壇に手を合わせる事が増えた。
幼い時
一度だけ、父の夢を見た。
父を見つけて、お父さん、生きてたの?
と、喜ぶ私に向かって父は人違いだよ。と怪訝な顔で言って夢の中で私を落胆させた。
目覚めた時、凪は本当に残念で仕方なかった。
せめて、夢の中だけでも優しい父に助けて欲しかったのに。誰も助けてくれないんだ。と、思っていた。
そんな絶望の淵を歩き続けて来た凪を助けたのは一体なんだったのだろうか?
あの日から凪の変化は思考にも現れてきた。
悔しかった事などを思い出しては歯軋りし、リベンジのための計画を立てる。
それが100%だったが、少しずつ、自分との対話が増えてきた。
今日は何を助けてもらおうかなあ?
と、救われる事を意識するようになってきた。
そして、少しずつ凪の心がストレッチされたように可動域が広がって行く。
そんなある日、凪は不思議な体験をした。