パーキンソン病の原因は腸にある?「本当の出発点」とは
― 病気はどこから始まるのか ―パーキンソン病は手の震えや動きの遅さなどの症状で知られる神経疾患ですしかし現在の研究ではこの病気は症状が出るはるか前から始まっていることが分かってきました。そして今、神経科学の世界で大きな問いがあります。パーキンソン病はいったいどこから始まるのか?近年の研究ではその出発点は脳ではない可能性が指摘されています。むしろ 腸 嗅覚 神経ネットワーク 環境といった身体全体のシステムの中にあるかもしれないのです。[data-toc]{background:#ffffffd9;border:1px solid var(--color-border-medium-emphasis,#08121a4d);border-radius:8px;display:flex;flex-direction:column;gap:8px;padding:12px 16px}[data-toc] h2,[data-toc] ol,[data-toc] p{margin:0}[data-toc] .toc-header{align-items:center;display:flex;font-weight:700;gap:12px}:is([data-toc] .toc-header) h2{color:var(--color-text-medium-emphasis,#08121abd);font-size:.875em}[data-toc] .toc-empty-message{color:var(--color-text-low-emphasis,#08121a9c);font-weight:400}:is([data-toc] .toc-empty-message) p{font-size:.75em}[data-toc] ol{list-style:none;padding:0}:is([data-toc] ol) .last.collapse a{border:none}:is([data-toc] ol) a{border-bottom:1px solid var(--color-surface-tertiary,#08121a14);display:block;font-size:.75em;padding:6px 0;-webkit-text-decoration:none;text-decoration:none}[data-toc] .h4,[data-toc] a{color:var(--color-text-medium-emphasis,#08121abd)}[data-toc] .h2{font-weight:700}[data-toc] .h3{font-weight:400;margin-left:8px}[data-toc] .h4{font-weight:400;margin-left:16px}[data-toc] [role=button][aria-expanded]{align-items:center;display:flex;font-size:.75em;font-weight:700;gap:4px;justify-content:center;padding:4px 0;text-align:center;-webkit-text-decoration:none;text-decoration:none}[data-toc] [role=button][aria-expanded=true]:after{mask-image:url("data:image/svg+xml;charset=utf-8,%3Csvg xmlns='http://www.w3.org/2000/svg' width='24' height='24' fill='currentColor' viewBox='0 0 24 24'%3E%3Cpath d='M20.97 14.55c0 .26-.1.51-.29.71a.996.996 0 0 1-1.41 0l-7.29-7.29-7.29 7.29a.996.996 0 1 1-1.41-1.41l7.29-7.29c.78-.78 2.05-.78 2.83 0l7.29 7.29c.19.19.28.44.28.7'/%3E%3C/svg%3E")}[data-toc] [role=button][aria-expanded=false]:after,[data-toc] [role=button][aria-expanded=true]:after{background:var(--object-low-emphasis,#08121a9c);content:"";display:block;height:1rem;mask-size:contain;width:1rem}[data-toc] [role=button][aria-expanded=false]:after{mask-image:url("data:image/svg+xml;charset=utf-8,%3Csvg xmlns='http://www.w3.org/2000/svg' width='24' height='24' fill='currentColor' viewBox='0 0 24 24'%3E%3Cpath d='M3.05 9.45c0-.26.1-.51.29-.71a.996.996 0 0 1 1.41 0l7.29 7.29 7.29-7.29a.996.996 0 1 1 1.41 1.41l-7.29 7.29c-.78.78-2.05.78-2.83 0l-7.29-7.29c-.18-.19-.28-.44-.28-.7'/%3E%3C/svg%3E")}[data-toc]:has([role=button][aria-expanded=false]) .last:not(.collapse) a{border:none}[data-toc]:has([role=button][aria-expanded=false]) .collapse{display:none}[data-toc]:not(:has([role=button][aria-expanded])):not(:has(.collapse)) .last a{border:none}:is([contenteditable=true],.no-js,#no-js) [data-toc] .collapse{display:revert!important}目次 1. パーキンソン病で起きていること 2. 症状が出る頃には神経が減っている 3. 最初の手がかりは腸だった 4. 腸の神経で見つかる異常タンパク 5. 腸から脳へ向かう神経ルート 6. 迷走神経研究の発見 7. 腸内細菌との関係 8. 最近の研究が示す二つのタイプ 9.「本当の出発点」とは何か 10. 命の営みとしての視点 最後に目次を開く1. パーキンソン病で起きていることパーキンソン病の脳ではαシヌクレインというタンパク質が異常に折りたたまれ神経細胞の中に蓄積します。この蓄積した構造はレビー小体と呼ばれます。正常なαシヌクレインは 神経伝達の調整 シナプス機能の維持などに関わる重要なタンパク質です。しかし異常な構造になると神経細胞の機能を乱し神経変性を引き起こします。その結果として 手の震え 動作の遅さ 筋肉の硬さといった症状が現れます。2. 症状が出る頃には神経が減っている臨床研究ではパーキンソン病が診断される頃にはドーパミン神経の50〜70%が失われていると言われています。つまり症状が出た時点では、すでに長い病気の過程が進んでいる可能性があります。このことから研究者はもっと早い段階の変化を探すようになりました。3. 最初の手がかりは腸だったパーキンソン病の患者では 便秘 消化管運動の低下が、運動症状の10〜20年前から見られることがあります。このことから研究者は腸の神経に何か起きているのではないかと考えるようになりました。腸には腸管神経系という神経ネットワークがあります。この神経は数億個の神経細胞からできており 腸の運動 分泌 血流 免疫反応を調整しています。そのため「第二の脳」とも呼ばれています。4. 腸の神経で見つかる異常タンパク解剖学研究ではパーキンソン病患者の腸神経に異常なαシヌクレインが見つかることがあります。特にアウエルバッハ神経叢という腸の運動を制御する神経で報告されています。この発見から腸が病気の出発点ではないかという仮説が生まれました。5. 腸から脳へ向かう神経ルート腸と脳は迷走神経という神経で直接つながっています。迷走神経は 腸 胃 心臓 肺などの情報を脳に送る巨大な神経です。研究では、異常なαシヌクレインが神経の中を移動する可能性が示されています。この現象はプリオン様伝播と呼ばれます。つまり、腸神経↓迷走神経↓脳幹↓中脳というルートで広がる可能性があるのです。6. 迷走神経研究の発見疫学研究では興味深い結果があります。過去に胃潰瘍の手術で迷走神経を切断した人を調べるとパーキンソン病の発症率が低かったという報告があります。これは腸から脳へ向かう伝播ルートの存在を間接的に支持する結果と考えられています。7. 腸内細菌との関係腸には100兆個以上の細菌が存在します。この細菌群は 免疫 炎症 神経伝達物質などに影響を与えます。この相互作用は腸脳相関と呼ばれています。研究ではパーキンソン病患者では腸内細菌の構成が変化していることが報告されています。この腸内環境の変化が 炎症 神経ストレスを引き起こしαシヌクレインの増加に関係する可能性が考えられています。8. 最近の研究が示す二つのタイプ最近の神経科学ではパーキンソン病には二つのタイプがある可能性が示されています。・body-first型腸から始まり神経を通って脳へ広がる・brain-first型脳から始まり全身へ広がるこの研究は病気の出発点が人によって違う可能性を示しています。9.「本当の出発点」とは何かここで重要な問いが生まれます。なぜαシヌクレインが増えるのかという問題です。研究者の中にはαシヌクレインは 神経保護 抗菌反応 ストレス応答に関係する可能性があると考える人もいます。つまり最初は「身体を守る反応」だった可能性があります。しかし長い時間の中で 環境刺激 炎症 神経ストレスが続くとタンパク質が異常構造になり神経変性につながる可能性があります。10. 命の営みとしての視点もしこの考え方が正しいならパーキンソン病は単なる神経の故障ではなく 環境 神経 免疫 腸内細菌などが関わる身体の長期的な適応の結果という側面もあるかもしれません。つまり病気とは身体が環境に順応し続けた歴史の中で生まれてくる状態の一つなのかもしれません。最後にパーキンソン病の研究は今、大きく変わりつつあります。かつては脳の病気と考えられていました。しかし現在は 腸 神経 免疫 微生物 環境が関わる全身のネットワークの病気として理解され始めています。そしてその問いは病気はどこから始まるのかという問題から身体はどのように環境と向き合い続けているのかという、より大きな生命の問いへと広がっています。