【漫画】張六郎『千年狐~干宝「捜神記」より~』一~五 | 本の虫凪子の徘徊記録

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【再読】  張六郎『千年狐~干宝「捜神記」より~』 MFコミックス フラッパーシリーズ(KADOKAWA)

 

前回の『狐笛のかなた』から「狐」繋がりで、本日はこちらを再読。ギャグ漫画です。

以前にpixivのオリジナルタグで見かけてふと興味を持ち、その後書籍版を購入しました。6,7巻も発売されたようなので、近々買いに行こうと思っています。

古代中国を舞台としたファンタジー漫画になります。

 

以下、内容についての記載あり。未読の方はご注意ください。

 

主人公の廣天は千年生きた狐の精。
涼し気な目元の美人です。泣きぼくろが色っぽい。
母の陽とよく似ていますが、より中性的な美貌ですね。手足がすらっと長く体の凹凸も少ないので、ぱっと見は完全に美青年です。幼馴染の獺ちゃんと並ぶと余計に男っぽく見えます。
基本的にボケ倒しです。
人間時は気品のある優雅な物腰ですが、狐姿だと無邪気かつハイテンション。すごい落差です。でも可愛い。
神木と伯くん、医者とのチームはいろいろな意味でバランスが取れていて良いですね。

どのキャラクターもそれぞれに魅力的なのですが、やはり一番好きなのはこの廣天です。

それから、牝狐の阿紫。妖艶な黒髪の美女です。毒婦っぽい登場の仕方をするものの、実際はかなり常識人で心優しく、自己犠牲的な部分のある女性です。陽や俔にさんざん振り回されていた過去編の姿が印象的でした。本当に、びっくりするほど真面目で世話焼きで優しい性格です。見た目は性悪で淫乱な「女狐」のイメージそのものなんですけどね。

時の皇帝の子を孕んだ、男妾の萬祥も印象深かったです。見た目が非常に好みです。男装の麗人と言われたら納得してしまいそうなほどの美しさで、おまけに賢い。
1巻の彼のエピソードはとても素敵でした。
カバー裏のおまけ漫画でやたらと優遇されています。

獙獙は抱き枕にしたいです。とても狐とは思えないくらいまるまると太っていて、ふかふかしていて、抱きついたらさぞかし心地良いのでしょう。私もあの毛皮に埋もれたい。

その他、1話しか出てこないようなキャラクターも、いえ、それ以前に名前すらなく数コマしか出てこないキャラクターでさえ、不思議と記憶に残るような描かれ方をしています。

舞台は古代中国ですが、「後宮」「閹人」「鬼神」や「易」など、日常ではあまり馴染みのない単語についてもきちんと意味を説明してくれるので、知識がなくても楽しむことができるのでは、と思います。
それから世界観としては、仏教が伝播するまでは地獄や輪廻転生の概念が無く、死後の魂がどうなるのかはあやふやだった、というのが面白いと思いました。その後冥府が作られ、役人たちが魂を管理するようになったそうです。冥府の様子は、常に忙しそうな部分も含めて少し『鬼灯の冷徹』を思い出します。

圧倒的な画力と魅力的なキャラクター造形、シュールでテンポの良いギャグの組み合わせが最高な作品です。1巻終盤の張華と廣天の会話や、4巻の廣天と阿紫の化かし合いの決着など、シリアスシーンの台詞回しも秀逸だと思います。
大分脚色が加えられているとはいえ、巻末に記載された参考文献は結構な数です。故事や漢詩などを引用した部分も多く、華やかさと血生臭さが入り混じる古代中国の雰囲気に浸り切ることができました。
中華ファンタジーや妖怪ものが好きな方には是非読んでいただきたいものです。

それでは今日はこの辺で。