彼は、いつも何一つ間違うことはなく常に正しいわけではないかもしれないけど、私にはいつも、少なくとも私より正しいようには見えた。それで負かされた、貶められたと思わされたことはないけれど。結局は私よりも頭がいいのだろう。いつも明るく朗らかにというわけでもないだろうが、少なくとも私よりは常に物事を前向きに捉えて前向きに取り組んでるように見えた。そう見せているだけかもしれないが。
おかげで何度か救われた。
それで中途半端に関わるからか、憧れでもなきゃ恋慕でもない、何を期待するでもない、殺すかセックスするかしかない、それでもまだ足りないような気持ちはある。殺すこともセックスすることもないが。引き摺り落としてやりたいが、失望させられたくない、絶対に穢されたくもないような。
とにかく。
そういうのは良くない。
他人に対してあまり強い感情や変な思い入れは持ちたくない。
私は苦手なひとは多く、嫌われることが多いが嫌いなひとは少ない。他人に興味がないからだ。好きとか嫌いとか、そういうのは困る。
自分の心に他人が入り込む隙があると不安になる。埋まらない隙かもしれないがそういう弱さは、ない方がいい。始めからないものは要らない。余計なものは、ない方がいい。手に余る。
まあ、私から追いかけなければ済むことだ。
だからまさか最後に追い詰められるとは思っていなかった。いや、いっそ分かりやすく追い詰められた方がマシだったかもしれない。刺し違える覚悟で反撃するし、全力で逃げるだろう。逃げようとしてるところを簡単には逃げない程度に追い込まれた、が近い。逃げられないわけではない。逃げ切りたいが、愛想を尽かされたいわけでもない。
文句言われるくらいは覚悟していた。誰が相手だろうとひとこと言い返せば引き下がると思った。甘かった。
始めから、必ずしも私の味方ではなかったけど、敵ではなかったからな。今でもそうなんだろうか。自分でその役を買って出たにせよ、完璧な人選過ぎて溜息が出るよ。本人が気づいてるかどうか知らないが。弱味そのものだと認めざるを得ない。
だからって言いなりになるわけじゃないけど