もし私が子供を生んで
その子供がまた子供を生んで
そうやっていけば百年先も千年先も
ごくわずかでも私は残っていくのと同じじゃないか

それでもきっといつかは
血が絶えてしまうのだけど

あるいは継ぎ足し継ぎ足しされた代々伝わる秘伝のタレのように
わたしっぽい成分なんか原形も留めなくなってしまうのだけど


じゃあ私に残るご先祖様の遺伝子は何を願って何を残しているのだろう


てなことを考えながらいい年になってしまったのだが

このままいくと
生涯独身子無しで
私が死ぬと私の存在なんて分子レベルで消滅してしまうのだ

いや質量保存の法則とかなんかあるだろうから
分子レベルで私が世界と混じり合ってしまう
がより正しいのだろうか

魂があって
それに質量があるならその分はどうなるのだろうか

すぐに
私のことを覚えている人もいなくなって

じゃあそんな世界は存在しないも同然じゃないか
私がいたってことすら忘れ去られて
初めからなかったことになるんじゃないだろうか

それって
私が世界なのだろうか
それとも世界が私なのだろうか
私が生まれる前の世界も
私が死んだあとの世界も
私は知ることがなく
この世は私の認識の中にしか存在しない

その点において

世界は狭い



何かを選ぶということは何かを選ばなかったということで
選ばれなかった方を試す機会はないのだ
人生は一度きり
世界はひとつ
そういう意味で
可能性なんて曖昧なものは
頭の中くらいにしか存在しない
過去は記憶でしかないし
未来は想像でしかない
現在だって夢を見る
目の前にあるものが本物だって現実だってどうやって誰に証明すればいいのか



それでも私は
この残酷な現実に
結構未練があるのだ


世界は美しく
人生は素晴らしい

かどうかはさておき
希少価値はあるかもしれないので

世界が全て夢か幻だったとしても
それなりに
愛している