大地を踏みならすという事 | 不思議旅行案内 長吉秀夫

大地を踏みならすという事

 御輿を担ぐということは、その土地を浄化する作用があるようだ。
 普段、何気なく毎日歩いている道を、重い御輿を担いで通る時、そんな思いがめぐる。素足やわらじで大地の感触をダイレクトに感じながら、地面を踏み鳴らしながら一歩一歩進んでいると、自分が歩んでいた一年間の垢が洗い落とされるような、そして、新たな力がその道に注がれるような感覚を覚える。同時に、大地から自分の身体の中に、エネルギーが入り込むような感じになる。
 もしかしたら、大地を踏み鳴らすという行為が、そんな感覚を呼ぶのかもしれない。例えば、相撲の力士がシコをふむ時、横綱の土俵入などは同じ力を呼ぶような気がする。
 或いは、歩くという行為そのものに、その力はあるのかもしれない。
 普段、僕たちは革靴やスニーカーを履いている。また、都会での日常の歩行距離や道程は、本来の人間の歩くという状態には程遠いのかもしれない。素足で何日も何日も、ただひたすら歩き続けるだけの修行というのも、この世には存在する。また、日本でも昔は、物凄い距離の沢や山を歩いて移動していた部族もいたと聞いたこともある。やはり、大地の感触を直接感じていたほうが、エネルギーを感じることが多いと考えたほうがよさそうだ。日常生活を履物を履かずに素足で過ごすことは、なかなか難しいことであるが、毎日の通勤や通学の道で、そのことをちょっと意識しながら歩くだけでも随分感覚がかわりそうな気がするが、どうだろうか? (不思議旅行案内/本文より)