平和を作り出す知恵、日本はソフトパワーで世界トップを目指せ

 平和を作り出し、維持するためには、外交政策を始め多くの政策がある。安全保障政策は、その内の一つのパーツに過ぎない。ジョセフ・ナイ元米国防次官補は、ハードパワーとソフトパワーとの概念を再定義している。
 ハードパワーは、武力行使、経済制裁はじめ「押す力」であり、ソフトパワーは、望む結果を引き出すために、課題の設定をし、説得し、魅力を感じさせる「引き寄せる力」であるという。
 日本のソフトパワーは、先進国でも見劣りするレベルである。具体的な外交力は数値で測ることはできないが、ソフトパワーの一部を示す指標は年々低下している。
 かつては、金額で世界トップだったODAは年々低下して、その存在感が薄くなっている。留学生の受け入れも年間14万人に過ぎず、米国88万人、中国35万人、仏29万人、独28万人に比べ見劣りする。また、日本の留学生の送り出しも年間3.4万人であり、中国70万人、独11万人に比べ遅れを取っている。
 国連の職員をみても、日本人は255人で、米国2600人、仏1484人、独516人、中国450人と、国連分担金が第2位の拠出をしている割にはお寒い状況だ。
 知的厚みを示す指標である世界の大学トップ100にも日本からは3校しかなく、米国52校に比べるべくもない。
 かつて戦争を繰り返した隣国同士の独仏は、若者相互交流700万人計画を立案し、見事、実施をした。首脳同士がぎくしゃくしても国民の間の一定の信頼は保たれるようになった。国境警備も独と仏から兵士を出した混成部隊が任務を担っている。政治が意識的に目標を立てて隣国との友好を継続的に進めているのだ。
 東アジアの安定のために最も重要なことは、日中韓の友好を深めることだ。これこそ、米国が日本に最も望むことではないだろうか。日中韓の友好なくしては、北朝鮮の脅威にもまともに対応できない。
日中韓で若者数百万人交流計画を立て、留学・相互ホームステイに補助金を出すなどして政府として積極的に応援したらどうか。国民同士の相互理解が深まれば、首脳同士が角突き合わせてもそれは一過性のものに過ぎなくなる。 軍事費にかける経費よりもより大きな効果があるのではないか。
 ソフトパワーは、遅れを取る日本にとって、世界トップレベルを目指して、本腰を入れて取り組むべき最重要分野である。
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