stylist長友妙子☆BLOG

一昨日、新作バレエ「シンデレラ」はオーチャードホール芸術監督としての熊川さんの才能を余すところなく



発揮した演出、振付でたくさんの観客を魅了して幕を閉じました。



12公演全て完売の満員御礼のため、立ち見でしたがその辛さも感じない程何度でも観たくなる



Kバレエカンパニーの「シンデレラ」は大成功を収めたと思います。



‘シンデレラ’というバレエ演目を観たことのなかった私にとって公演を観るまではストーリーがあまりにも



有名すぎるのでここまで感動の連続とは思ってもみませんでした。



そこがやはりバレエという芸術のすばらしさと熊川さんの手にかかるとどんなバレエも私達を異次元に



いざなってくれるファンタジーがあります。



ですから私はダンサーとしての熊川さんの大ファンでもありながら、演出・振付をクリエイトするアーティス



ティック ディレクターとしてもリスペクトしております。



すでに幕が降りて2日も経つというのにはっきりと目や耳、心に刻まれた場面は美しい記憶に永久保存されて



ています。



最初に目にしたシンデレラの住む家の歪んだマントルピースの舞台セットや、薄汚れたシンデレラの衣装は



モダンでエレガント、ファッション的に言ってもトレンドを感じさせる程のまさに現代のシンデレラ像でした。



アグリーシスターズは滑稽でおかしく、継母の打算的で意地悪なキャラクターは憎らしくもありながら



大いに笑いを誘うところは外国人キャストの表現力が絶妙なのです。



そして一幕最後、シンデレラが美しいドレスを身にまとって登場し今までとは一転してきらめく夜空の中、



ゴージャスな馬車でお城に向かうシーンはだれしもうっとり溜め息が漏れるほど照明も音楽も感極まる美しさ



でした。



二幕も三幕目も見せ場はもちろんたくさんあるので延々記述していたいのですが、これ以上回想しているともう



現実に戻ってこれないような気がするのでこの辺にしておきます。



ただクライマックスのシンデレラと王子がお城に向かう満天の星空の中に流れ星が一筋キラリと落ちる



ロマンティックな演出には会場の全てが幸せに包まれた瞬間のハッピーエンドでした。



最後にあとひとつ特筆すべきはプロコフィエフの音楽は‘ロミオとジュリエット’くらいしか馴染みがなく



全くシンデレラの曲を知らなかった私には最初、複雑すぎて難しくすんなり耳に入ってこなかったのですが、



熊川さんの手がけるバレエ芸術のお陰で観れば見るほど、聴けば聴くほど感動を誘い印象的なシーンを



作り上げるのに不可欠な素晴らしい音楽と解かったことは私の中のハードルをひとつ飛び越えた感があります。



そして芸術監督 熊川哲也版 Kバレエカンパニーの「シンデレラ」はまたひとつ、バレエ界、芸術文化面で



新たな扉を開いた作品となったことを申し上げたいのです。