一等賞とるためにやっていますが、そこを追い求めているわけではない | 億の細道

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1億円をようやく突破してきました。


果報は寝て待てというけれども、どうですかね?

――インタビューを聞いていると初開催の日本大会においても「優勝!」とは言われません。
「結果は他人と相対的に比べた結果であって、それは目立つものですが、実はあまり価値のあるものではなかったりします。もちろん、自分にとっては、優勝という結果はないよりもあったほうがいいのですが、そこを追いかけても得られるものは少ないのです。結果はあくまでも後からついてくるもの。一等賞とるためにやっていますが、そこを追い求めているわけではないのです」

――優勝よりも、いかに100パーセントの力を発揮するかが大事と?
「100パーセントの力を出したとしても優勝できずに3位に終わるかもしれません。でも100パーセントを出せば、1番が取れるというチームにもっていきたいのです」

――その中で勝敗を分けるものは何ですか?
「パイロットの腕と機体が半々。機体のパフォーマンスが悪ければ、どうやっても勝てません。パイロットの技量は似たレベルですから、そのときの自己コントロールで、いかにパフォーマンスを出せるのかで、順位が変わってきます。今回は勝負できる機体を手にすることができました。直線のスピードが旧型機に比べて30キロは違っています。1秒から1.5秒の差ですからね」

――パイロン(旗門)の通過と、高度制限、G制限などのルールがある中で、単独レースとは言え、350キロを超える高速の中での瞬時の判断力は、F1以上の能力が必要になってくるのでしょう?
「コースについては、分析スタッフがコンピューターによって弾きだしてくれます。それを事前に頭にインプットしておき、10メートル単位のタイミング、タイミングで、駒送りのように、ここにきたらこう、ここにきたらこうと、先を予測しながらコントロールするわけです。実際にトレーニングで飛ぶと、オンボード映像が撮れますから、それを何度も見てズレを修正していく。風の計算も入れ、2、3回のトレーニングフライトで、ぱっと合わせるんです」

――ぱっと合わせる? ずいぶん簡単そうに言いますが(笑)。
「経験と訓練。もう20年やっています、それくらいやれば誰でもできるんじゃないですか?」

――それでも勝敗がつきます。
「技術、マシン、戦術……最大の準備をして、最後は心の問題だと思っています。集中力です。99.9パーセントのパフォーマンスで飛んでいるパイロットが、99.7パーセントのパフォーマンスになれば、99.8パーセントを出しているパイロットに負ける。そして、結果として1番から10番と順位がつく。そういう世界なんです」
(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)


《室屋義秀(むろや・よしひで)》1973年1月27日生まれ。福島在住。中央大在学時代に米国で飛行ライセンスを取得。1995年に但馬空港で開催されたエアロバティックスのワールドカップを見て衝撃を受け、本格的にエアロバティックスを訓練。世界選手権参加やエアショーなどの活動を行いながら、2002年にエアショーチームを立ち上げ、2009年からアジア人初のレッドブル・エアレースへ参戦。本拠地である「ふくしまスカイパーク」にNPO法人ふくしま飛行協会を設立。青少年への航空文化の啓蒙活動などを行っている。