三菱重工、世界の洋上風力発電に挑む | 億の細道

億の細道

1億円をようやく突破してきました。


果報は寝て待てというけれども、どうですかね?

 英国政府から補助金を受けるに当たっては、英国に拠点を置くという条件もついていた。英国は風力発電関連の研究施設や製造拠点を自国に集積したいと考えているためだ。さらにタービンの羽根は巨大で輸送コストが高いことから、地産地消の性格が強い産業でもある。そこで三菱重工は、あえて発電関係に特化した拠点であるMPSE(Mitsubishi Power Systems Europe)を2007年にロンドンに設立、人的ネットワークを拡大していったという。

 第2の理由であるSSEとの提携は、SSE側からアプローチがあったようだ。SSEは、ラウンド3の事業者としてコンソーシアムを組んで、ドッガーバンク地区だけでなく複数の地区に進出している。当初は独Siemens社とだけ契約をしていたが、プロジェクトの規模の点から主要パートナーがもう1社必要となり、そこで英国に拠点を置いていた三菱重工に白羽の矢を立てた。SSEにとってもラウンド3は、設備業者と顧客との関係を超えた「運命共同体」として取り組まなければならないことから、信頼の置ける三菱重工との提携を決断したようだ。

■油圧駆動技術を駆使して大型化

 第3の理由である「風車の大型化」でも、三菱重工には対応力の点で強みがある(写真2写真3)。現在の風車の能力は、一般に5MW程度が限界となっている。これは主に「増速機」の制約による。増速機とは、風を受けてゆっくりと回る大型風車の回転速度を歯車機構などによって増し、発電する上で効率のよい速度にしてから発電機に伝える装置である。このため、世界の風力発電機メーカーは競うように優秀な増速機メーカーを買収し、自社技術として取り込んでいる。

画像の拡大

写真2 横浜に設置した出力2.4MWの風車の実証機 (写真:三菱重工業)

画像の拡大

写真3 風車の羽根を取り付けるハブの部分と、発電機などを納めたナセル部 (写真:三菱重工業)


 三菱重工は、英国のベンチャー企業であるArtemis Intelligent Power社を買収したことを2010年12月に発表した。Artemis社は、歯車ではなく油圧駆動を使うことで従来の増速機の限界を超える技術の開発をしている。三菱重工はこの技術を用いて、10MW級の発電能力を持つ風力発電機を実現すべく、研究開発を続けている。

■海洋国家の日本でも洋上風力は有望

 陸上も含めた風力発電全体では、米国が2009年に首位だったが、2010年には中国が抜き去って世界最大の風量発電市場となった。米国の5GWに対し、2010年のわずか1年の新設分だけで中国は16GWもの風力発電能力を備えたのだ。ちなみに16GWは、東北電力の設備容量に相当する規模である。