三菱重工、世界の洋上風力発電に挑む | 億の細道

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1億円をようやく突破してきました。


果報は寝て待てというけれども、どうですかね?

英国政府の主導で、2020年までに合計32GW(ギガワット)もの大規模な洋上風力発電を実現しようという計画「Round(ラウンド)3」が進んでいることを2011年2月3日付の本コラムで紹介した。先行する「ラウンド1」「同2」と合わせて英国の全消費電力の3分の1を賄い、世界中の風力発電企業の研究施設や製造拠点を英国に集積させることで一大産業に発展させようという同計画が、世界の再生可能エネルギー産業に大きな影響を与え始めている。

 今回は、ラウンド3に参画している唯一の日本企業である三菱重工業の取り組みを通じて、洋上風力発電の最先端で今、何が起こっているのかをお伝えしたい。

■なぜ巨大プロジェクトに食い込めたのか

 洋上風力発電は、日本国内ではまだこれからという再生可能エネルギーで、国内企業で力を入れているところは少ない。しかも、国内ではよく名前が知られている三菱重工だが、世界の風力発電分野においては数多く存在する風力発電機メーカーの中の1社としか見られていなかった。その同社が、英国のラウンド3のような世界屈指のプロジェクトに食い込めたことには次の3つの理由がある。

 第1に、英国政府とのつながりをつくったこと。同社は2010年2月、英国政府と大型の洋上風力発電機の開発で提携した。英国に製造・開発拠点を置き、英国政府から補助金の支援も受け始めている。

 第2に、英国電力大手のScottish and Southern Energy社(SSE)と深い関係を構築したこと。三菱重工は2010年7月、洋上風力発電設備をはじめとする低炭素エネルギー開発分野でSSEと開発協力することで合意した。実はこのSSEが、今回のラウンド3におけるDogger Bank(ドッガーバンク)地区の主事業者なのである。具体的には、発電規模9GWの洋上風力発電設備を担当している。英国での洋上設置に最適な大型風力発電機をSSEと組んで開発することで、ラウンド3で使う設備の受注を狙ったわけだ。

 第3に、風力発電機の大型化に対して積極的な技術開発を進めていること。風車(タービン)が作るエネルギーは羽根の直径の2乗に比例するので、大型化すると出力が大幅に上がっていき、採算がとりやすくなる。

写真1 三菱重工業 原動機事業本部 風車事業ユニット長の高山栄太郎氏 (写真:テクノアソシエーツ)

 このうち、第1の理由である英国政府とのつながりについて、三菱重工の風力発電部門を率いる原動機事業本部風車事業ユニット長の高山栄太郎氏は、こう経緯を明かす(写真1)。「洋上風力発電のプロジェクトは大規模になることが多い。英国政府としても、大きなリスクを抱えることになるわけで、プロジェクトをやり遂げるための安心・安定を重視していた」。そこで英国政府は、企業の信頼性やプロジェクトに取り組む姿勢、信頼性ある設備を納入できる十分な供給能力などを提携先の選定基準として打ち出したという。ここで重工メーカーとしての実績が評価されたようだとする。