ラ・カペッラ・レイアル・デ・カタルーニャ 設立25周年ボックス (La Capella Rei.../ALIA VOX

¥3,775
Amazon.co.jp

 サヴァールが1987に設立した合唱団体「ラ・カペッラ・レイアル・デ・カタルーニャ」が2012年に25周年を迎えたことを記念したボックスが先日発売された。SACD4枚組で3000円弱なのだからお買い得だろう。

 話はずれるが、合唱はSACDでないと真価を判断することは難しい。合唱団において一番重要となる倍音がCDだと大幅にカットされてしまうからだ。響きに自信があれば、きき手にそれを少しでも伝えたいはずだ。予算など色々と問題はあるのかもしれないが、クラシック音楽が商業的に大きな利益をあげることはどだい無理なのだから、薄利であったとしてもSACDでリリースしてほしい、というのがぼくの願いだ。ぼくは最近合唱ものに関してはSACD以外は買わないようにしている。SACDを選択すること自体に「私たちの響きをききなさい!」という合唱団側の熱い思いと自信がこもっているのだ。

 とSACDについて熱くなってしまったが、サヴァールの本ボックスは指揮者としてのサヴァールを堪能するのに最適だろう。ヴィオラダガンバ奏者としてのサヴァールと指揮者としてのサヴァールのどちらを評価するかは人それぞれだろうが、彼が示したルネサンス以前の西洋音楽世界の魅力は、クラシック愛好家ならば知っておく必要があるだろう。

 サヴァールが自らのアルバムを「歴史譚」としてリリースし続けていることも無視してはならない。クラシック音楽のききてはつい特定の時代にコミットし、他の時代はついつい捨象してしまいがちだが、クラシック音楽は大きな歴史的文脈の上に作曲されてきた。自分がきいている音楽がどのような時代状況におかれたかを意識せずにきくことは、二流の聴き方と言わざるをえないだろう。サヴァールの歴史譚がどこまで続くかはわからないが、手に取ったものにはっきりと歴史を意識させるジャケット(ジャンヌダルクであったり日本の南蛮屏風絵なお)は、クラシック音楽の歴史性を認識せざるをえない。

 サヴァールは卓越した演奏者のみならず、このような知識人としての側面も忘れてはならないのだ。毎回ずしりと重い解説に驚かされるだろう。サヴァールが一枚のアルバムに込めた膨大なメッセージを読み解くだけでも楽しいのである。音楽以外でこれだけ楽しませてくれるアルバムなんてあまりない。ぜひ手に取ってみてほしい。