芸術新潮 2013年 02月号 [雑誌]/新潮社

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 今月の芸術新潮の特集は小林秀雄だ。

 ご存知の通り小林秀雄は日本において文学と音楽を出会わさせた歴史的著作『モオツァルト』の著者である。この著作の音楽批評史における意義はよくわからない。しかし、この著作が吉田秀和など後の音楽評論家たちに影響を与えたことは間違いないだろう。吉田秀和がこの著作を安易に批判する人間に食ってかかったエピソードは有名だ。日本における音楽批評が確立していなかった時代に、先鞭を切って将来の音楽批評の一つの指針を示した。音楽についてあまり書かなかった小林秀雄の評論で結局一番有名となったのが、骨董でも絵画でもなく、この『モオツァルト』なのもこの著作の価値を示しているのではないか。1946年という終戦当時に超一流の教養文化人であった小林秀雄によって音楽評論の指針が示されたことは、日本にとって大変幸運な出来事だったと思う。
 
 だけど、小林秀雄は音楽について多く書いていないので、彼の音楽趣味はさっぱりわからなかった。文学や絵画、骨董についてはあれだけ文章を残しているのに、なぜだろうか。ベールに包まれた小林秀雄と音楽の関係がちょっとだけだが今月の芸術新潮で紹介されている。

 まず注目は小林秀雄の使っていたオーディオセットがフルカラーでのっていることだろう。他にもバルトークに興味を抱いていたこととか、ベートーヴェンの所感などについても紹介されている。

 音楽以外についても知の巨人小林秀雄の一端を知るには大変良い特集なので、手にとってみてください。