Mercury Living Presence Boxed Set/Mercury Living Presence Boxed Set

¥16,557
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ちょっと前に発売したマーキュリーレーベルの50枚組ボックスに関する記事が『ステレオ・サウンド冬号』に掲載されていたので、紹介したい。

 この記事にはマーキュリーレーベルがいかにすごいレーベルであったかが詳細に説明されている。プロデューサーの名前とか使われている機器の名前とかまでは立ち読みだけでとても覚えられなかったけど、とにかく歴代最高の耳と手腕を持つ名プロデューサーと技師が当時最高級の録音機材を用いた伝説的レーベルだそうだ。以前からマーキュリーレーベルの噂は知っていて、このボックスの企画が発表された時も各方面から喜びの声がネットから挙っていた。だから、レーベルは異なるものの同時期に購入したRCAの「Living Stereo collection」が素晴らしかったこともあり、とりあえず購入だけしておいたのだ。

 だけどぼくがこのボックスを買った動機はポール・パレーの廃盤となった演奏であって、ドラティとか興味がなかったから長いこと放置していた。この記事を読んでそんなに偉大なレーベルだったのかと驚き、ききはじめている。

 このマーキュリーレーベルは村上春樹がどこかのエッセイで取り上げていたような気がする。このボックスにも収められているドラティによるチャイコフスキーの1812年だ。本物の大砲を使用したことで録音史において大変重要らしい。村上春樹も録音の臨場感を絶賛している。なんでも世の中のレコード・マニアたちの間でこの録音の初期プレスは高値で取引され重宝されているらしい。

 ぼくが長々とマーキュリーレーベルの「録音」について長々と話していることにピンと来ない人もいるかもしれないから説明しておこう。クラシック愛好家には、演奏ではなく「録音」を楽しむという趣向もあるのだ。録音とは、録音技師の手腕によって大きく出来が変わってくるおもしろい世界だ。有名なのは「デッカサウンド」で、目の前に広がる臨場感たるやSACDにもひけをとらない。演奏がよけりゃ録音なんて・・・なんて思う人もいるかもしれないが、あくまでも録音芸術である。録音と演奏の両輪が揃って初めて「名盤」といえるんじゃないだろうか?

 さて、このボックスのCDに関しては先に紹介した「ステレオ・サウンド冬号」を参照していただきたい。ぼくからはポール・パレーとデトロイト響による演奏、特にベルリオーズを推薦しておこう。この指揮者のおもしろさはやはり定番曲から理解するのが一番の近道だ。アメリカのオーケストラのもつ機能性をつきつめた躍動感と聡明さ。ベルリオーズの幻想がこんなにあっけらかんと明るくて良いの?と戸惑うはずだ。断頭台に挙る人を見送る聴衆の歓喜とはかくもパレード的な賑やかさに満ちているのだろうか?いいじゃない。楽しく地獄へと旅立ちましょう。楽しそうなんだけど、曲想と矛盾からこそ漂う不気味さはたまらない。病み付きになること間違いなしです。

 このボックスは第二弾が発売され、パレーはそちらでも8枚が収められるそうだ。資料的価値を考えると、クラシック愛好家は必携のアイテムです。またアマゾンでアップされ次第告知いたします。第一弾を買いのがした人は必見です。