ベスト オブ くるり/TOWER OF MUSIC LOVER2/ビクターエンタテインメント

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 最近友人に勧められて、くるりのベストアルバムをよくきいている。クラシック音楽一辺倒のぼくにとって、中島みゆき以外のJポップをきくのは高校以来のことになる。

 友人がぼくにくるりを薦めてきた理由のひとつに、彼らがウィーンでオーケストラを使って録音したことを挙げていた。でも、ブルジョワ精神の深く根付くプライドの高いウィーンの音楽家たちが、ポップス曲を快く演奏したはずがないとぼくは思うのだが・・・クラシックへの無知がなせるわざか。彼は父親の音楽好きの影響を受け、クラシック音楽の造詣も深いそうだが、ウィーンで録音したことは彼の音楽文化への無教養さがあらわれているのでは。ポップスをオーケストラで録音するなら、やっぱり庶民的クラシック音楽文化の根付くアメリカやイギリス、もしくはドイツだぜ。

 という苦言はおいといて、くるりの音楽は悪くない。スタイルを一貫させることなく、様々な音楽に挑戦している姿勢が伺える。一発当てて自分のスタイルに拘泥し、同じような曲を無意味に作り続けるようなバンドではない。音楽を作る力がしっかりしているから、自らのスタイルを意識的に作り替えることができる器用さがある。ぼくがきいていたアルバムはベストだが、ちっとも飽きない。最近のバンドに多い肩の力の抜けたお洒落な音楽だが、よくきくと音色は豊かで細部も凝っている。これはこれでいいじゃないか。

 あとポップス曲でいいと思ったのは、何かしながら、例えば掃除や風呂上がりのちょっとした時間に、きき流すことができることだろう。

 クラシック音楽だとどうしても音楽に耳を傾けざるをえない。それに流しっぱなしにしていると、音楽を軽んじているようで罪悪感がふつふつと湧いてくる。やはりクラシック音楽はスピーカーの前に坐って、じっくりきく音楽なのだ。

 一方でポップスは実に手頃だ。ぼくのパソコンにつないでる貧弱なスピーカーでも全く悪くない。これがクラシック音楽なら、音の悪さだけで神経を逆撫でされるところだろう。パソコンを開いてiTunesを開きクリックすれば良質な音楽が流れはじめる。なんと気軽なことだろう!ぼくのタンノイから厳めしく流れるクラシック音楽とは大違いだ。

 別にこれはポップスを軽視しているわけではなく、質の違いを強調しているだけだ。用途によって流す音楽が変わってくるのは当たり前のことだろう。ポップスへと音楽趣味の敷居を広げることによってぼくの音楽ライフは以前よりずっと豊かになったと感じている。きっと探して行けばもっと良いバンドと出会えるはずだ。音楽の世界は果てしなく広い。うん、そう考えるだけでわくわくしてくるね。