Philips Original Jackets Collection/Decca Clas

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  毎年リリースが続いているユニバーサルによる50枚組級大型ボックスの今年の企画は、PHILIPSの55枚組ボックスに決まったようだ。PHILIPSはオランダのレーベルで、現在はデッカが音源を管理している。今までと同じく、紙ジャケットといえどもオリジナルデザインを採用している点がうれしい。

 内容は、素晴らしく、文句のつけのようがない。PHILIPSを代表する名盤が一同に会している。初心者はもちろんのこととして、中級者以上であっても迷うことなく手が伸びてしまうだろう。届く日が今から楽しみでならない。

 このボックスの最大の評価ポイントは、バラエティー豊かな指揮者の演奏に接することができる点にある。収録されている指揮者をあげても、マズア、ハイティンク、ベイヌム、ラトル、ブリュッヘン、ビシュコフ、ガルデッリ、コリン・デイヴィス、ドラティ、イヴァン・フィッシャー、ガーディナー、ゲルギエフ、マルケヴィチ、エド・デ・ワールト、コンドラシン、小澤・・・・列強するのが疲れたが、まだまだ続く。これだけ多様な指揮者が一度に楽しめるボックスはそうないだろう。未聴の指揮者が多く含まれており、PHILIPS音源がノーチェックだったので嬉しい限りだ。

 僕としては、キャリアをスタートさせ、円熟期にさしかかる頃のゲルギエフの音源が何枚か入っている点に注目したい。ゲルギエフはストラヴィンスキーの『春の祭典』のアルバムで一躍巨匠の仲間入りをし、多くのファンを獲得した。しかし、その後彼は異常な仕事の量をこなし、今ではロンドン響を率いるほどの人気指揮者になったとはいえ、ストラヴィンスキー以来の決定的な名盤を残したとは言い難い。僕は、この時期の、つまりPHILIPS時代のゲルギエフが最も勢いがあったのではと思っている。本ボックスには、その頃のアルバムが数枚入っているので、今から楽しみでならない。

 あと合唱ファンとして言及すべきはオルフのカルミナ・ブラーナだろう。合唱を担当している晋友会合唱団は今は亡き関屋晋先生が率いていたアマチュア合唱団だ。アマチュア合唱団が、世界に冠たるベルリンフィルと競演するということで、注目を集めた。そのために猛烈な練習を積んだそうで、その模様は彼の著書『コーラスは楽しい』に記されてる。その結果、演奏は大成功のうちに終わり、翌日の新聞ではベルリンフィルや小澤を差し置いて、このアマチュア合唱団への賛辞に満ちていたとか。その後の晋友会合唱団の日本での活躍は皆さんもご存知かと思う。NHKで素晴らしい合唱を今でも披露しているので、ぜひともきいていただきたい。

 他にも書きたいことがたくさんあるが、これらのアルバムを紹介しただけでも、このボックスがいかに魅力に満ち、お買い得であるかおわかりいただけたのではないだろうか。アマゾンで現在8000円で予約が始まっている。一枚160円。届く日が楽しみでなりません。ぐひひひひ・・・
 

コーラスは楽しい (岩波新書)/岩波書店

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