Baltic Runes/Harmonia Mundi Fr.

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 今日の一枚は、ポール・ヒリアー指揮エストニア室内合唱団演奏の『Baltic Runes』というアルバム。

 エストニアというと、場所さえピンと来ない人が多いかもしれない。しかしバルト三国と称されるエストニア、ラトビア、リトアニアにはそれぞれ良い合唱団がある。このような小国に、クラシックでいえばビッグオーケストラと肩を並べるような団体がいるとこも、合唱を聴く醍醐味と言えるだろう。

 エストニア室内合唱団は、スウェーデンなど北欧の合唱団ほど透徹としておらず、ロシアの合唱団ほど重たくもない、適度で心地良いアンサンブルが持ち味だ。彼らは以前、harmonia mundiから『Baltic Voices』というアルバムをリリースし好評を得た。このシリーズは三集まで出たものの、いつのまにか立ち消えになってしまった。おそらくこのアルバムはこのシリーズの続編に位置づけられるのだろう。エストニア室内合唱団のファンである僕は、harmonia mundiから出ている彼らのアルバムを全て所有している(プチ自慢)。

 このアルバムはSACDの特性がしっかり活かされている。合唱は規模が小さいものの、オーケストラと同じくらいその響きを捉えることが難しい。実演と録音の印象が最も大きいのは、僕の印象で言うと合唱だと思うほどだ。声によって作られる倍音は、ピアノや管弦楽よりも豊かで繊細だからだろうか?SACDのおかげで認識を改めさせられることが、合唱の場合特に多い。このアルバムも例に漏れず、他のCDのアルバムは聴こえてこなかった芳醇なハーモニーに浸ることができた。

 曲は北欧の作曲家を中心に構成されている。前半は親しみやすい。シベリウスの「Rakastava」はコンクールの課題曲ともなり有名だろう。後半は若干鬱気味の重苦しい曲が続くので、聴く人を選ぶかもしれない。この難曲を歌い切る合唱団の技量には驚嘆するしかない。

 日本のクラシック愛好家はどうも合唱に興味を持ってくれないが、海外では事情が異なる。クラシック専門誌では合唱コーナーがしっかりあるし、合唱指揮者が表紙を飾ることもある。僕はこのブログで何回も繰り返しているけれども、音楽の源は「歌」にある。この視点って本当に大事です。皆さんも合唱に興味を持ちましょう!