アメリカ交響楽 [DVD]/ファーストトレーディング

¥421
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 今日はガーシュウィンの伝記映画『アメリカ交響楽』を紹介する。1945年に公開されたこの映画は現在パブリックドメインであり、アマゾンで490円で用意にてに入れることができる。

 この映画がどこまでガーシュウィンの伝記映画として史実に再現しているのか僕はよく知らない。研究が進んで現在と公開された1945年当時とで事実が異なることもあるだろう。

 しかし、この映画は当時のアメリカの文化状況を学ぶ上で大変意義がある。この映画を見て、僕は文章でしか知らなかったたくさんの事実を実際に映像で見ることができた。例えばガーシュウィンがティンパンアレーという楽譜出版社の集まる街の試演ピアニストとしてキャリアをスタートさせたことは知ってはいた。しかしこの映画を見て、彼がどのような場所で弾いていたかがわかった。ボックス部屋を与えられ、楽譜を求める演奏家たちに試演ピアニストたちが聴かせて売るのだ。そんなこと今の僕らに想像することは、まず不可能だろう。また白人が顔を黒く塗って黒人のなりでショーを演じる「ミンストレルショー」で一世を風靡したアル・ジョンソン本人の映像は、資料的価値として一級といえるだろう。また彼が自分の音楽を売り込んでいくシーンも、当時の音楽家のおかれた状況を理解するのに役立つ。彼の友人であったオスカー・レヴァント本人も出演して、素晴らしいピアノ演奏を見せている。

 作品としても悪くないと思う。強迫観念に追い立てられるように仕事に打ち込み、孤独に苛まれながらも作曲を続けていくガーシュウィンの姿に心を打たれた。アメリカ音楽の礎となるべき土台をわずか38年という短い人生で築いた天才をうまく描いている(実際どうだったかは知らないけれど)。僕は今24歳だけれども、わずか21歳に「スワニー」でヒットを飛ばし一流作曲家としてエリート街道をひた走るガーシュウィンを見ていると思わず嫉妬してしまう。ここまですごいと嫉妬する気もうせるけれども。ラヴェルに作曲の指導を断られた話などの逸話も踏まえられており、ラヴェルが登場するとクラシックファンとしては胸が躍る。

 最後ガーシュウィンの追悼コンサートで「ラプソディーインブルー」が流れながら、次第にアングルは高くなりホール全体を映し出す。僕にはそれが今でもガーシュウィンの音楽が世界中の人々に愛されている状況を喩えているように思えて、少しほろりと来た。

 そして全編に渡ってガーシュウィンの音楽が流れまくる。もうガーシュウィン好きにはたまらない。どのような状況下で「ラプソディーインブルー」の他、「キューバ序曲」「ピアノ協奏曲」「巴里のアメリカ人」などが作曲されたか、この映画を見るだけで知ることができる。

 まぁ、見てください。本当に良い勉強になりますよ。