Symphony 2 / Stele Op 33 / Kol Nidre Op 39/Mahler

¥1,607
Amazon.co.jp

 今日の一枚は、ギーレン指揮、南西ドイツ交響楽団演奏のマーラーの交響曲第二番だ。

 ギーレンは現代音楽を得意とする、ブーレーズのような明晰判明な演奏をする指揮者だ。arte novaから出ている一連のアルバムは安価で入手しやいのでぜひとも聞いてみてほしい。感情を排した現代音楽のように無機的な「ダフニスとクロエ」に仰天することだろう。よってギーレンは、誇張的な演奏を嫌う通なクラシック愛好家たちから、強く支持されてきた。

 特にマーラーは彼の代名詞として有名だった。ギーレンにかかればマーラーの構造が丸裸にされ、彼特有の毒気が抜かれてしまう。強がっているのがバレてもじもじする不良の子供のように、マーラーもなんだか恥ずかしそうだ。バーンスタイン信奉者の僕としては物足りないことをこの上ないが、指揮技術が卓越しているので、ぐうの音も出ない。

 しかし、最近のギーレンには、明らかに変化の兆しが見えるのである。孫の顔を見てにやけるおじいちゃんのように、優しくなったのだ。あれだけツンツンして大衆など目にもかけていなかったギーレンも、年をとって丸くなりつつある。特に第五楽章のクライマックスで広がる透き通った響きを聴くと、心が洗われる。世の苦しみを忘れさせてくれるような、清純な演奏だ。

 僕としては次第にこの変化が異常な方向へと舵を切り、徐々にクレンペラーやチェリビダッケのような唯一無二の特異な指揮者へと変貌をとげることを期待している。ブーレーズは残念ながらその兆しを見せることなくただ良い人になっていったが、ギーレンからはポテンシャルを感じてしまう。

 最後は合唱についてコメントしておこう。歌っているのは「Eurpean choir academie」。学生など若手が主体の合唱団だ。声が若く幼いため復活の壮大さとミスマッチに聴こえなくもないが、僕が先のような清らかさを感じ取ったのは、彼らによるものが大きいかもしれない。彼らのおかげで、誇大妄想的とも言えるマーラーの音楽が、いい具合に落ち着いている。Arte novaに多くの録音を残しているなど実績も十分で、将来に期待したいところ。彼らと組んだことに、ギーレンの意図が垣間見れるかもしれない。

 ちなみに、今度ベートーヴェンのボックスも出るので、こちらも必見。ぜひどうぞ。
ベートーヴェン: 交響曲全集/ギーレン&バーデン=バーデン&フライブルクSWR交響楽団 (Lu.../ミヒャエル・ギーレン

¥7,000
Amazon.co.jp

Daphnis Et Chloe/Ravel

¥591
Amazon.co.jp