Symphonies No.8 & 9/A. Bruckner

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 今日の一枚はEMIのSACDシリーズから、シューリヒトによるブルックナーの8番と9番。

 この演奏も既に名盤として大変名高い。既にプロの物書きの方々が山ほど寄稿していらっしゃるので、僕が今更とやかく言うことは何もない。

 しかし、このSACDの録音と演奏が、文句なしに素晴らしいことだけは念を押しておく。僕がブルックナーの演奏で、天上世界を垣間見る思いが出来たのは、ヴァントとチェリビダッケの他に、この演奏しかない。究極の恍惚状態に誘ってくれるだろう。

 シューリヒトは、コントラストを武器とする指揮者という印象がある。特に一部の曲では速度変化が耳につき、早くなったり遅くなったりと忙しい。しかし、シューリヒトはそのような一面的な指揮者ではなかった。彼は速度だけでなく、音色、ニュアンス、緊張度などあらゆる音楽的要素を自在に操ることができたのだ。その千変万化の即興性は、ブルックナーのようなスケールの音楽では、大きなうねりとなって聴き手に迫ってくる。聴き手は圧倒的な迫力を前に成す術が無く押し流されるだけで、音楽に身をゆだねるしかない。クライマックスでは、ビックバンのように音が膨らみ広がって行く。

 クラシック音楽は、シューリヒトの音楽のように、津波のように、主体性を根こそぎ引き抜いてしまうようなエネルギーを有している。ぜひ手に取ってください。僕がここまで念を押すCDってあまりありません。

 ちなみに最近シューリヒトとフランス国立放送管との録音が、altusからリマスタリングされ次々とリリースされている。僕は3枚程度持っているが、どれも良い録音なのでおすすめです。シューリヒトを味わったことのない人の入門に良いかもしれません。いくつか貼っておきます。
ベートーヴェン:序曲「コリオラン」、ピアノ協奏曲第3番、ブラームス:交響曲第4番 (Schur.../カール・シューリヒト

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ブラームス:ドイツ・レクイエム (Schuricht Live Collection ~ Br.../カール・シューリヒト

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