今朝の産経新聞に掲載された中川八洋・筑波大学教授の提言に疑問があるので少し論じてみたい。(それにしても、懐かしいなあ。私の学生時代の「冷戦」華やかりし頃はソ連問題で勇名を馳せておられた方だ。数年前に、『保守主義の哲学』という好著を出されたが、今度は皇室問題とはちょっと驚き。)

中川教授の見解のポイントは、「(私が前回のブログに書いたように)愛子さまのお子さまのご即位で初の女系天皇が誕生して皇位の正統性に疑問が生じるのではなく、愛子さまご即位の時点で皇統断絶の恐れが強まる」というもの。したがって、愛子さまのご即位ではなく、あくまで皇統を継承する男系男子に嫁ぐかたち、つまり、愛子さまは皇后陛下になられるより他ないというのである。

その上で、中川教授は、(恐れ多くもと断りながら)伏見宮家の系図をたどって、皇位継承資格を有する男系男子を、旧宮家の3人の男児に絞り込み、そのうちのどなたかと愛子さまがご結婚なさり、(皇太子殿下もしくは秋篠宮殿下の次の)天皇としてご即位なさることを提言している。中川教授によれば、これが「皇統を継承する唯一の方法」だという。

はたしてそうだろうか。皇統を守るためには、この3人の方々が皇籍復帰されるだけでは不十分であろう。その中から皇位を継承する方を選んでも、また男子が生まれなければ元の木阿弥ではないか。それだけでは、皇位継承の安定性は確保されない。したがって、第一に、旧宮家の復活により、男系男子の絶対数を確保することが先決だろう。その上で、愛子さまご即位の時期まで少なくともあと20年ほどは情勢を見極め(もしかしたら、皇太子殿下や秋篠宮殿下に男児がお生まれになるかもしれない)る。その間にじっくり議論を深めればよいのではないか。拙速こそ禁物だ。