CSIS戦略国際研究所における「日米戦略リーダーシップ会議」が始まりました。自民党から、大島理森、石破茂、小野寺五典、西村康稔衆議院議員、浅野参議院議員、民主党からは、吉良州司衆議院議員に私が参加しています。この試みは、麻生外相(外相就任前)のイニシャティヴで昨年から始まったもので、与野党の議員による本物の日米政治家交流を目指すものです。(今回、肝心の麻生外相は、離日直前にセットされた日米安全保障閣僚協議(「2プラス2」)やチェイニー副大統領、ライス国務長官との会談のため、初日は出たり入ったり。)

戦後最高の日米関係といわれていますが、小泉・ブッシュの個人的関係に由るところが大きく、一皮めくると政治家同士の交流はお寒いものがあることはかねてから指摘されてきました。もちろん、この連休を利用して、多くの国会議員がワシントン(はじめ世界の首都)を訪問しています。行きの飛行機でも何人かに会いました。しかし、大半はその場限りの意見交換や写真撮影に終始して、突っ込んだ討議を重ねたり深い関係を築くことは稀なのです。

今回参加したプログラムは、初日に現役の政府高官や元高官を囲むケース・スタディが行われ、参加者全員が現状の把握と分析を深めることができした。単なる学者や評論家ではなく、実際に政策立案、政治判断に携わった(あるいは現に携わっている)朝野の専門家たちとの討議は、非常に刺激に富むもので、一日がかりで日米同盟が直面する外交安保課題について一気に思考を集中させることができました。

内容についてはオフレコなので、詳細は明かせませんが、初日のプログラムは以下のようなものでした。

「国家戦略とは」by エドワード・ルトワック(米国随一の戦略理論家です!)
「アメリカの対イラク戦略」 by アンソニー・コデスマン(CSIS戦略部長)
「対外政策における議会の役割」 by ジェレミア・ガートラー(CSIS安保部長)
「六カ国協議」 by ヴィクター・チャ(NSCアジア太平洋部長)
「在日米軍再編」 by ジョン・ヒル(国防総省国防長官官房北東アジア部長)
「イラン核問題」 by ジョン・オルターマン(CSIS中東部長)

昼食をはさんで、朝9時から8時間余ぶち抜きの政策討議。
印象に残ったのは、ブッシュ政権のイラク政策批判。きわめて率直な(つまり相当厳しい)現状評価・将来展望が行われ多少驚きましたが、私からは、911からイラク戦争に突入する2年余の米国内の賛否の議論に言及しながら、なぜこれだけの有意の(単なる感情的な不戦平和論ではないという意味での)武力行使反対論が根強かったにもかかわらず、ブッシュ政権は武力行使に走ったか、をテーマに議論を喚起しました。

そこからは、ブッシュ政権の歪んだ中東政策の実態が浮き彫りにされました。ただし、イラン核開発をめぐる米政権の政策選択については、巷間流布されているような安易な武力行使の可能性は極めて薄いという印象を持ちました。911テロの勃発によって政策決定過程から完全に排除されてきた中東専門家たちの分析力が、イラク戦争以降の混沌状況の中から改めて見直されてきており、中東湾岸諸国の戦略的複雑さや宗教的、民族的な地域特性についての再考が政権内でも真剣に行われている様子が伺えました。

改めて言うまでもありませんが、「武力行使の可能性」をちらつかせることが、必ずしも武力行使を目指したものではなく、相手を真剣な交渉のテーブルにつけ武力行使を回避するための外交の一環であるという点についての認識も必要だということです。米政権内における政策決定の潮目の変化を見極めずに、相変わらず「先制攻撃戦略を放棄しないアメリカは・・・」と批判することは生産的とはいえず、かえって問題解決に向けた日米協調を妨げることになるのではないでしょうか。

在日米軍再編については、完全に米国ペースに乗せられてしまった、という根本問題については稿を改めて詳しく論じたいと思いますが、今回の合意内容が(政府の説明次第では)国会審議の過程で実行困難に陥る可能性の高いことを改めて浮き彫りにされました。せっかくワシントンに来たので、現地の友人と連携して米軍再編に関する一次資料を収集して、連休明けの国会審議に備えようと思っています。

ところで、訪韓中の塩崎副大臣が韓国の与野党党首から会見を拒否されたという残念なニュースが飛び込んできました。ノ・ムヒョン政権下の韓国の反日政策は、相当深刻で、今後の日米の北朝鮮政策や対中政策に暗い影を投げかけることになるでしょう。