今日、広島地裁(坂本倫城裁判長)は、被爆者援護法に基づく原爆症の認定申請を国が却下したのは違法だとして広島、山口、東京の被爆者ら41人が却下処分の取り消しなどを求めた訴訟で、「疾病はいずれも原爆の放射線が原因」などとして、全員を原爆症と認める原告勝訴の判決を言い渡しました。坂本裁判長は判決理由で「残留放射線による外部被ばくや内部被ばくを十分に検討しておらず、限界や弱点がある」と指摘。現行審査方法で算出される被ばく放射線量は「一応の最低限度の参考値」にすぎないとし、国の認定基準の妥当性を完全に否定しました。

ところで、被爆者手帳を持っている全国の被爆者は、06年3月末現在で26万人弱ですが、このうち原爆症と認定されたのはたったの2280人で、被爆者全体の1%にも満たないのです。「爆心から遠くなるほど人体に与える放射線の影響は少なくなる」との理論を機械的に適用して、厚労省は、白血病など同じ病気でも距離に応じて放射線量を推定し、多くのケースで原爆症認定を斥けてきたのです。しかし、00年に最高裁がこの方式について「未解明な部分を含む推定値」に過ぎないと批判して以来、この種の原爆症認定訴訟では、国の敗訴が続いてきた経緯があります。

そして、本判決では、以前のエントリーでも紹介した5月の大阪地裁判決に続き、今回の判決でも国は事実上完敗(連敗!)したこととなり、もはや厚労省の論拠は司法の場で完全に説得力を失ったといっても過言ではありません。5月の大阪地裁判決の直後には、ぬけぬけと国は控訴に踏み切りましたが、年老いた被爆者の皆さんの実情を考えれば、これ以上の遅延は許されません。

そこで、私たちは、今後の原爆症認定や被爆者援護行政の在り方に根本的な転換を政府に迫る「要望書」の作成を行い、判決結果が出る直前の本日午前、「核軍縮と原爆症認定基準の緩和を求める要望書」を、我が党の高木義明副代表に託し、厚生労働省にて赤松厚生労働副大臣にこれを手渡しました。赤松副大臣は要望を真摯に受け止める旨約束しましたが、引き続きあらゆる手段で行政監視を強めていかねばなりません。

ところで、さる7月31日に行われた東京都原爆被害者協議会主催の「原爆慰霊祭」に寄せた私のメッセージを掲載し、改めて原爆症認定基準の緩和に向けた決意表明とします。

     『第42回 東京都原爆犠牲者慰霊祭に寄せて』

 あの広島、長崎への原爆投下から61年目の夏がめぐってまいりました。
 唯一の被爆国として、私たち日本人は、二度と再び人類がこのような惨禍を被らぬよう、国際社会に対し戦後一貫して核軍縮を提唱してまいりました。しかし、隣国の中国や北朝鮮をはじめ、最近ではむしろ核兵器の世界的な拡散が顕著となっています。いまこそ、被爆者の皆さまの切実な声を世界に広め、アメリカやロシアを含めた本格的な核軍縮の国際運動を展開してまいらねばなりません。
 翻って、国内に目を転じますと、未だに被爆者の皆さまに対する国の補償や支援が十分でないことに、政治家の一人として誠に申し訳ない気持ちでいっぱいです。去る5月の大阪地裁判決により、原爆症認定訴訟はじつに8回連続で原告勝訴を勝ち取ることになりましたが、厚生労働省は直ちに控訴に踏み切るなど、国の姿勢はまったく改善されておりません。東京在住の被爆者の方々の平均年齢はすでに72歳を超え、昨年度だけでも176名の方々が亡くなられました。
 世界的な核軍縮の進展と国内外の被爆者の皆さんへの補償と支援は、唯一の被爆国である我が国政府が何が何でも実現させなければならない喫緊の政治課題です。本日の慰霊祭にあたり、「東友会」の皆さもとともに、原爆犠牲者の皆さまのご冥福を心よりお祈り申し上げ、政治の場でのさらなる努力をお誓いし私の挨拶とさせていただきます。

       平成十八年七月三十日

                          衆議院議員 長島 昭久

追記:前回のエントリーで皆さんにアドヴァイスをお願いしたところ、日本の外交に対する「素朴な疑問」の数々をお寄せいただき心より感謝申し上げます。メールで直に詳細な項目や強烈な批判を送ってくださった方もいらっしゃいました。心より御礼申し上げ、大いに参考にさせていただきます。また、御礼が遅れたことも併せてお詫び申し上げます。(2006-08-05 08:45)