昨日のエントリーに対して、「いい加減にして欲しいのは民主党そのものだ!」「ブログでつぶやいてないで自ら行動せよ!」などの厳しいお叱りを多数頂戴しました。この件に関しては、私自身も「煽り」の片棒を担いでしまっていますので、すべての批判を甘受するほかありません。

それでも、やるべきことを整斉と実行しなければなりません。
国会議員として、それは政治であり政策です。
政府の足らざるところを指摘しつつ、民主党としての対案、提案を練り上げていかねばなりません。さらに、政権構想における外交安保ビジョンの策定も急がねばなりません。・・・現状では、期待する人は少ないとしても、です。議会制民主主義の下では、野党のオルターナティヴは、絶対必要だからです。

明日は、民主党の安全保障部門を代表してNHKの日曜討論に臨むことになります。自民党は、町村前外務大臣です。在職中には、何度も質疑でお手合わせいただきましたが、いつの時も冷静沈着で理路整然と答弁され、その中にも毅然とした日本外交を唱導していたことが印象的です。前任者の川口外相の掘った大穴を埋め、独自の外交ドクトリンを確立するには1年余の任期は短すぎたのでは、と少々残念な気がしたものです。後任の麻生外相が(失言を批判されながらも)率直な発言で日本外交に覇気を吹き込んでいることが救いですね。

テーマは、米軍再編問題、自衛隊のイラク撤収、そして、日米同盟関係とアジア外交についてです。

米軍再編問題をめぐっては、安倍官房長官が述べた「地元合意を得るのが難しければ日米間の最終合意を優先せざるを得ない」という発想を質すところから入りたいと思います。この発想は順序がまったく逆だからです。昨年秋に来日したブッシュ大統領自らが小泉首相に「民主主義国家における地元住民の基地受け入れに対する理解の重要性」を明言していました。米国は、この点にきわめて神経質であり、自国内では基地と周辺住民との友好的な関係構築に一日の長があります。

米軍再編協議そのものについては、日本側の「主体性の欠如」が混乱を招いた根本原因であると指摘せざるを得ません。「当事者意識の希薄さ」と換言していいと思います。そのために、少なくとも2001年9月の同時テロ直後から始まった米軍再編のプロセスに、我が国が正面から向き合うようになったのは、遅れること3年の04年10月、町村外相(当時)の就任以降だったのです。しかし、その時までに米側の基本計画は完了しており、日本側はその計画を鵜呑みにし、受け入れるか、値切るか、という「お決まり」の低レベルな日米外交交渉となってしまいました。

したがって、海兵隊のグアム移転経費75%負担などという法外な話に振り回されることになってしまったと考えています。衆院安保委員会で麻生外相が口走った「立退き料」という説明では、外務省総予算6900億円よりも、思いやり予算を含む我が国の米軍駐留経費負担総額6300億円よりも高い、8800億円という明らかに現行法の枠を超える海外基地建設のために経費負担することについて、日本の納税者を説得することは困難です。

私は、日本が、米国との同盟協力において、アジア太平洋地域の平和と安定に主体的に寄与するマスター・プランを持っていれば、91年湾岸戦争の二の舞のような「はじめに財政負担ありき」とはならないはずだと思っています。米国の世界戦略遂行における在日米軍基地の持つ価値は、その地政学的位置、経済的技術的観点、政治の安定性などからいって、他をもって代え難い死活的なものです。そのことを日本はもっと効果的にアピールすべきです。それに加えて、97年の日米防衛協力のガイドライン策定以来、日米間で積み重ねてきた軍事協力(といっても、主として「戦争以外の軍事活動」=military operations other than war, MOOTW)の射程をアジア太平洋地域に広げることによって、米軍がグアムを戦略拠点とすることと相俟って、同地域への抑止効果と秩序安定への意義のある寄与となり得ると考えています。

『日米同盟の変革と再編』(昨年10月末の日米合意のタイトル)と言うのなら、せめてこれぐらいのスケールで構想できないものかともどかしく感じていました。しかし、こういう発想も、これまでのような「対米依存」から、まず「セルフヘルプ」を基本に独自の安保観を確立していくことによって初めて出てくるのではないかと思っています。(じつは、偉そうに言っている自分自身も、米国留学時代に初めて、ワシントンの政府、議会、軍関係者や、専門家の方々との議論を通じて次第にこういった発想を養うことができました。)

自衛隊のイラクからの撤収については、すでに英国や豪州のみならず、米国もイラク国内の政治プロセスをにらみながら出口戦略を真剣に探っている段階であり、「撤収するか否かではなく、撤収をいつにするか」に議論の焦点が移っています。政府に問いたいのは2点。いかなる環境が整えば撤収を開始するのか、そして、自衛隊撤退後の我が国のイラク復興支援プランは何であるのか、それは誰が担うべきか、ということです。

前者については、首相が無事選出され(すでに3ヶ月遅れている!)、イラクの正式な政府が樹立されることが最低条件だと思っていますが、最近、英国のリード国防相が、比較的治安の安定した南部各県(日本の自衛隊が支援しているムサンナー県も含まれる地域)については、政治プロセスとは切り離して治安権限のイラク人への移譲を開始する可能性について言及したことは注目に値します。また、陸上自衛隊撤退後については、私見では、航空自衛隊による輸送協力を残し、隣国のクエートかヨルダンに日本の対イラク復興支援センターを創設して、自衛隊と民間の協力による日本型CIMICを実施することも一考だと思います。

最後の日米同盟とアジア外交については、小泉政権の日米同盟一辺倒の姿勢を批判せざるを得ません。日米関係とアジアとの関係は日本外交にとって車の両輪であって、小泉首相が強調する「日米関係が良好であればあるほどアジアとの関係が良くなる」という点は正しいものの、それと同時に、アジアに外交基盤を持った日本の同盟国としての価値を米国に示すことは、より強固な日米同盟関係を築く上で不可欠です。そういうダイナミックな外交を展開するためにも、「首脳外交」の効用を訴え、その実現に向けた政府の努力を強く促したいと思っています。

それは、首相が靖国参拝に拘ろうと拘るまいと、我が国として必ず成し遂げなければならない外交政策の基本中の基本です。現状のように、事務方に「戦略対話」を丸投げしているようでは、本来の戦略的な外交など展開しようもありません。首脳外交で、拉致問題を前進させ(まだ成果は不十分ですが・・・)、戦後最高の日米関係を築いた小泉首相なのですから、中国や韓国との関係で首脳外交を忌避する理由は見当たらないはずです。

とくに、中国との外交は、今後、世紀の単位で我が国の最重要課題となるでしょう。対中外交は、大きく分けて3つの側面から成り立っています。一つは協調、二つは競争、三つは抑止です。米国は、さかんにshape & hedgeといっています。つまり、協調を促して安定的な関係を形作っていく努力(shape)と、その努力が実らず不安定な関係に陥ってしまった場合に備えるリスク・ヘッジ(hedge)の努力の必要性です。私は、これに「競争」の側面を加え、「遠交近攻」外交によって、インドやロシア、豪州やASEANなどとの関係緊密化によって、中国に対し外交攻勢をかけつつ、我が国にとって有利な環境の下で中国の台頭をしっかり受け止める(英語で言えばmanageということになるが、適当な日本語が見当たりません。失礼!)戦略を模索したいと思っています。

以上、予告から少し日が経ってしまいましたが私の安全保障観の一端です。(ほかに、民主党予算案で5000億円も防衛費を削っておいてセルフ・ヘルプもないもんだ!・・・とのご批判も多数頂戴していましたが、これはまた稿を改めてやりたいと思います。)