安倍自民党は、明らかに「小泉前」に逆戻りした印象。
支持率の急降下は、国民がそこを敏感に捉えている証左だろう。
かくて、安倍自民党の支持率はついに、森政権時代、つまり「小泉前」に逆戻りしたのだ。

自民党を「ぶっ壊」してまで構造改革に挑戦し続けた小泉さん(もちろん、細かいところで批判にさらされてきたものの)と、「自民党で改革を」と叫ぶ安倍総理とでは、自民党(およびその取り巻き業界・団体)に対する姿勢の違いが鮮明に出ている。そこが如実に現れたのが、政治と金をめぐる安倍自民党のドタバタ劇だ。

赤城農水大臣の事務所費をめぐり、さすがに「法律に則って適正に処理」という故松岡大臣答弁と瓜二つの弁明では逃げ切れないと観念した(安倍総理の意を受け)中川幹事長が内規の策定を指示した。ところが、党内の反対で発表できなかったという。(7月12日の各紙報道)しかし、さらに野党やマスコミの追及を受けると、今度は正式に安倍総裁の指示で政治団体の資金を資金管理団体へ一元化するよう党内で議論することになったという。(ここで注意を要するのは、安倍総裁は内規を策定することを指示したのではなく、「議論を始めること」を指示したのだという点。つまり、これは明らかに選挙向けのポーズに過ぎず、選挙が終われば議論など霧散する可能性が高い。)

赤城事件は、佐田・松岡・伊吹ら各大臣の事務所費問題を受けて改正された政治資金規正法が、改正にもかかわらず依然としてザル法であることを瞬く間に実証した。このことは、立法府に身を置く国会議員として恥ずべきことである。しかし、こういういい加減な法律であることが自明であったからこそ、民主党は、政治家関連の政治団体すべての収支公開と領収書(1万円以上)の添付義務付けを明記した独自の改正法案を提出したのだという点だけは、改めて明確にしておかねばならない。(公明党も民主党案には本音で賛成していながら、本会議採決では、自民党と徒党を組んで民主案に反対したことも改めて明記しておきたい。)

つまり、いまの自民党を前提に「改革を!」と力んでみても、安倍総理に国民を納得させるだけの説得力はゼロということだ。提灯持ちの御用評論家が、テレビや雑誌で盛んに安倍擁護の発言を繰り返しているようだが、笑止千万。知的良心は大切になさった方がいいのでは、とだけ申し上げておきたい。その点、「(赤城大臣は)領収書を公開すべきだ」とブログに書いた「小泉後」の代表選手・タイゾー議員の感性の方がはるかに鋭い。

いずれにしても、この「小泉後」、「小泉前」で考えていくと、争点が明確になる。第一に、政治と金の問題。小泉さんなら、悪びれず、(民主党の「日本国教育基本法案」をなかなかいいじゃないか!と言ったように)民主党改正案を丸呑みしたであろう。残念ながら安倍総理にはそれができなかった。

第二に、公務員改革。これも、渡辺行革大臣が衆院本会議で机を叩いて「天下りは根絶します!」と絶叫したにもかかわらず、政府提出の官製法案は、これまで陰でこそこそやっていた再就職の斡旋を堂々と法律で公認する見事なザル法に仕上がった。にもかかわらず無理やり会期延長して、これを強行採決。「こんな法律で天下りがなくなると本気で思っているの?」と扇参院議長に突っ込まれる始末だ。これまた「小泉前」に逆戻り。ならば、参院で与野党逆転を実現し、民主党の「天下り根絶」法案を参院で可決させるしかない。

第三に、年金改革。これも、多言を要しまいが、年金制度の「抜本改革」を財源も含めて具体的に提案しているのは、民主党だけだ。自民党と公明党は、3年前の「100年安心プラン」に呪縛されて、身動きが取れない。だから、財源が怪しいなどという批判でごまかしているのだ。これは、そもそも小泉政権の負の遺産であるから、安倍総理としては如何ともし難いであろうが、これを乗り越える気概を持たねば、「小泉後」のトップリーダーとして政局を主導することは到底できまい。これまた、参院で民主党提案の「年金の信頼回復3法案(一元化法案、保険料流用禁止法案、社保庁解体・国税庁統合法案)」を丸ごと先議し可決させるまでだ。

かくて、「小泉前」に逆戻りした自民党はもはや恐るるに足らず。
最大の敵は、己自身にあり、だ。
ここで、気を緩めてはいけない。
実際、民主党の支持率は思うように伸びていない。
政権はあらゆる手段を講じて反撃に転ずるであろう。勝負はこれからだ。
こちらも、覚悟を決めた代表を先頭に、まっすぐにひたむきに政策を訴えていく以外にない。
かならず、そこに国民・有権者の皆さんが呼応してくれるはずだ。
なぜなら、「小泉後」の正統な後継者は、安倍自民党ではなく、民主党なのだから。