「海自給油の目的外使用、考えられず」外務副大臣が会見で
(2007年9月22日11時56分 読売新聞)

 【ニューヨーク=白川義和】小野寺五典外務副大臣は21日、ニューヨークの国連代表部で記者会見し、海上自衛隊が参加しているインド洋上の海上阻止行動「不朽の自由作戦(OEF)」のバーレーンにある司令部を20日に訪問した結果、「海自の給油活動がOEF以外の活動に使われる事態はおよそ考えられないことが確認できた」と述べた。

 副大臣によると、司令部のオペレーション・ルームでは、周辺海域を航行する船舶の位置を常時、確認できるシステムが確立しており、海自が給油した艦船がOEFの作戦海域外に移動すれば、明確に把握できるという。司令部のコズクリフ米第5艦隊司令官やOEF参加各国の連絡官も「海自の任務を認識している」と話していた、という。
(引用終わり)

政府よ、まだそんなことを言い募るつもりなのか!
往生際が悪いというか、余りにも不正直、不誠実である。
小野寺副大臣は、個人的にも親しく尊敬する友人の一人だが、国民をミスリードする発言なので、厳しく反論させていただく。

この点については、前回のエントリーでも指摘したとおり、特定海域ごとに指揮命令系統が分かれている米軍の部隊編成を考えれば、海自の給油活動がOEF以外の活動に使われる可能性は常にあるのだ。すなわち、インド洋上で給油を受けた米軍艦艇は、一義的にはアフガンOEF向け多国籍艦隊CTF-150隷下で活動するはずだが、その同じ艦艇がその後(残りの燃料を使って)ペルシャ湾へ入れば、自動的にCTF-152およびCTF-158隷下に編入されイラク向けの作戦行動に従事することになる。こういった任務をまたぐ米軍艦艇の移動は、イラク戦争開始以来おそらく毎日のように行われてきたに違いない。

したがって、私は、臨時国会でのテロ特措法(現実にはテロ特措新法)をめぐる審議の冒頭で、政府が「対イラク作戦に従事する米軍艦に燃料を補給することはない」との過去の答弁を修正せざるを得ないだろうと踏んでいた。(実際、テロ特措法には、OEFへの補給に限定するとは一言も書いていないから、政府はイラク向けの作戦行動もイラクにおけるアルカーイダなどテロリスト撲滅のためのものだ、と開き直る可能性すらあると読んでいたのだが。)

しかし、である。
外務省は、副大臣をして従来通りの答弁をさらに繰り返すつもりのようだ。

しかも、昨日、防衛省が、NGO「ピースデポ」の指摘を受けて、03年2月に行われた空母キティホークへの間接給油(海自の給油艦から米海軍の給油艦を経由して同空母へ給油)の総量を20ガロンから80ガロンに訂正したばかり。当時の福田康夫官房長官が会見で述べた「キティホークの燃料消費は1日20ガロンで、海自提供の燃料はほとんど瞬間的に消費してしまう。イラク関係に使われることはあり得ない」との発言の信憑性に重大な疑問が投げかけられた矢先である。防衛省幹部は、もはや従来の答弁のラインでは持たないと観念しているに違いない。

過ちを改むるに憚る事なかれ。

政府は、海自の給油が必ずしもOEFに限定されるものではなかったと正直に認め、過去の発言を撤回修正すべきだ。この政府答弁の修正(正確には虚偽答弁の修正)を国民がどのように受け止めるのかは、現時点ではわからない。ようやく、洋上補給活動への国民の理解が進み、各種世論調査の数字が微妙に賛成多数に変化してきた矢先だけに、このモメンタムを失いたくないとの政府与党の気持ちは十分に理解できる。

しかし、嘘はいけない。
給油総量の数字をごまかしたり、虚偽答弁をこれ以上繰り返せば、社会保険庁の二の舞だ。(ちなみに、私の恩師であるジム・アワー教授(元米海軍大佐、国防総省日本部長、現ヴァンダービルト大学教授)は、海域ごとに指揮統制を分ける米海軍の運用の基本に関わる日本政府のいい加減な説明ぶりに激怒していた。)

臨時国会でのテロ特措新法の国会審議を、生産的、建設的なものにするためにも、政府にはこれ以上の「悪あがき」を止め、我が国として「テロとの闘い」をどう進め、国際社会の協力にどう参画すべきか、という本質論を与野党で真剣に討議する環境をつくってもらいたい。私たち民主党も、議論する前から「反対ありき」の後ろ向きの議論をするつもりはない。