昨日は党の外交防衛部門会議で双日総合研究所の吉崎達彦(ご存知、かんべえ殿!)さんの、今朝は私的な勉強会で三井物産戦略研究所の渡部恒雄さんから、与党共和党が敗北を喫した中間選挙の総括を聞いた。

アメリカ民主党の勝因は、ずばり「中道化」にあったことが明らかにされた。民主党は、銃規制や同性愛婚など党内左派の年来の主張を封印して一致結束し、(行き詰まったブッシュに代わる)「新しい方向性(New Direction)」というスローガンの下に一致結束して中道寄りの党を演出して勝利を収めたというのである。New Directionは、04年の大統領選挙で失敗した有権者の怒りを掻き立てるAnti-Bushに代わる穏健なスローガンである。

これは、90年代半ばから急速に保守化した米世論(保守化の起源は、レーガン時代の80年代初頭)を背景にしたもの。民主党右派の代表格が、ヴァージニア州上院選挙の激戦を制し初陣を飾ったウェブ元海軍長官(レーガン政権)であり、08年の大統領選挙を狙う若き黒人スターのオバマ上院議員らである。彼らは、「ブルー・ドッグ」(ブルーは、民主党のイメージカラー、ドッグは論客という意味あい)と呼ばれ、保守的な主張を前面に民主党の中道路線を引っ張り勝利に貢献した。

アメリカの現象は、私たち日本の民主党にとっても参考になる。

ほぼ10年に1回づつ政権交代を繰り返してきたアメリカ式二大政党制の基本的な約束事は、「野党は、政権をとったときに困るようなことは言わない」(吉崎さん)のだ。極端に党派的な行動には批判的で、より現実的で中庸な解決方法を求めている。イラク戦争でネオコンに振り回され、傷ついた米国民は、なおさら中庸を求めている。

とくに、イラク戦争の終わり方に米国民は大きな関心を寄せている。吉崎さんのたとえ話が面白い。これまでのブッシュ政権のイラク政策は、午前0時を回ってハコテン3回も食らってるのに、「朝までやって取り返すぞ!」と息巻いてるに等しい。これに対して、民主党左派の即時撤退論は、「俺は負けたから帰る!」と終電も過ぎたのに雀荘を飛び出して行くに似る。来月発表される予定のベーカー委員会(イラク研究グループ、ISG)の報告書は、まさしく中庸の現実路線で、「そこそこで終わらせるので、あと半チャン2回我慢してね」というものだそうだ。

ラムズフェルド国防長官を更迭し、穏健保守派のロバート・ゲイツ元CIA長官を指名したブッシュ大統領が、この中庸現実路線を受け入れる準備に入ったことは間違いない。国務長官のライスも新国防長官のゲイツもISGのベーカー元国務長官も、パパ・ブッシュの人脈だ。イラク戦争に反対したパウエル前国務長官やアーミテージ前国務副長官やリチャード・ハース前国務省政策企画局長らリアリストたちが、ネオコンに代わってイラクの後始末に乗り出す構図。ネオコンが目の敵にしてきたイランやシリアとも連携をとりながら、イラクの国内情勢を収束させる戦略だ。

こういった米戦略の転換に、ネオコンに軸足を置いたブッシュ政権との緊密関係を誇示してきた小泉・安倍路線がどのように対応するのか、慎重に見極めて行く必要がある。本日正常化した国会では、金曜日にも衆院安全保障委員会で「防衛庁の省昇格法案」が実質審議に入る模様だ。

野党のトップ・バッターで質疑に立つことになりそうだ。これまで審議に加われなかった悔しさもこめて、「一問入魂」(野田前国対委員長の言葉)で臨みたい。米政権の戦略転換にともなう米軍再編やミサイル防衛をめぐる政策の変化の可能性、いよいよ安倍政権の下で本格的な見直し研究が始まった集団的自衛権の解釈変更、さらには、省昇格とともに本来任務となる自衛隊の海外活動に対するシヴィリアン・コントロールのあり方など多角的に質問するつもり。