ついに衆議院が解散された。

この天下分け目の総選挙を、歴史的な選択とできるかどうか。
候補者たる私たちと、主権者たる国民との共同作業に、日本の将来がかかっている。決して大げさでなく、そう確信する。

慢心も油断も楽観もない。
ただ「政権を担う」というとてつもない緊張感が胸に迫ってくるだけだ。

今日から始まる40日間の熱い闘いを通じて、私たち民主党に対し半信半疑の有権者をどこまで納得させられるか、が紛れもなく勝負どころだ。

とりわけ外交安全保障。

内政で民主党が自民党を遙かに凌駕していることは、すでに有権者には浸透している。年金、医療、介護、子育て、教育、雇用政策で、自民党がいかに選挙向けスローガンを並びたてたとしても、現下の惨状をもたらした責任は覆い隠しようもない。官僚主導政治の脱却も、中央集権打破・地域主権の実現も、官から民への流れも、あの小泉政権でさえすべては掛け声倒れの中途半端な改革に終わったことを有権者はすでに見抜いているはずだ。もちろん、これだけでも十分、政権交代の理由になる。

しかし、一発勝負の「投票による政権選択」の経験のない日本国民にとり、政権交代という未体験ゾーンへ突入するにあたってなお石橋を叩きたくなる気分に駆られることも理解できる。

そこで、民主党の外交安保政策だ。

今朝も、自民党の全面広告が主要各紙に掲載されていた。
テーマは、ずばり民主党の外交安保政策に対する有権者の不安を掻き立てるものだ。題して、「日本の未来が、危ない。」 それにしても、内容はお粗末。ついでに教育と憲法にも触れているが、この広告がいったいどれほど有権者の心を揺さぶるものかはわからない。しかし、売られたケンカはきっちり買わねばなるまい。以下、反論しておきたい。

(1)新テロ対策特別措置法を制定した自民党に対し、民主党はこれに反対したではないかと。ちょっと待った! 新テロ特措法は、旧テロ特措法に明記されていた国会承認条項(しかも事後!)すら削除したいい加減な法律だ。民主党は、テロ対策を国際協調の下で進めることにはどの党よりも積極的に取り組んできた。しかも、「ガンコに平和の社民党」とは異なり、必要な場合には自衛隊の運用は認める立場だ。ただし、自衛隊という実力組織を海外に出す時には、国会(つまり国民)によるコントロールという最低限のルールを定めるべきだと主張しているのである。したがって、この最低限の民主的な歯止めを安易に吹っ飛ばす自民党の融通無碍なやり方を続けることこそ、よほど「日本の未来が、危ない」。

(2)海賊対処法を制定した自民党に対し、民主党は反対。ちょっと待った! 昨年10月に海賊対処を直接麻生総理に提案した立場から、明快に反論しておきたい。これも(1)のロジックと全く同じである。今回の民主党マニフェストにも明記するように、民主党は、海賊対処は断固やるべし、一義的には海上保安庁だが、困難であれば自衛隊で対処すべし、との立場で一貫している。この点で、自民党とほとんど変わりはない。しかし、我が国の国益を背負ってソマリア沖にまで派遣される海上自衛隊の皆さんに堂々と胸を張って任務を遂行してもらうためにも、国会両院の圧倒的多数による承認は不可欠だと主張しているだけなのだ。

ちなみに、この考え方には、浜田防衛大臣や石破前防衛大臣はじめ心ある自民党政治家はみな賛同してくれている。おっちょこちょいの輩が、最低限の民主的ルールも無視し、常軌を逸した過激な話を民主党に吹っかけて、わざと反対に回らせて、「ほら、民主党は日本への商船を海賊から守るという、国民生活に直結した法案にもかかわらず反対した!だから、民主党に外交は任せられない!」と喧伝しようとしているだけなのだ。自民党こそ「政策より政局」ではないか。

(3)自民党は「在沖縄海兵隊グアム移転協定」を締結し、沖縄県民の負担を軽減しようとしているのに、民主党はこれにも反対していると。ちょっと待った! 世界規模で行われる米軍再編に際し、米国との在日米軍基地再編協議において独自のアイディアも示せず、受け身の姿勢に終始してきた自民党政治家が、土壇場で米側との条件闘争に陥り、結局、(米軍としてすでに既定路線だった)在沖縄海兵隊のグアム移転部隊の移転費用を大部分負担させられた、というのが同協定締結の真相ではないか。この自民党による基地受け入れ自治体の意向無視の対米追従路線こそ、長期的な日米同盟関係を揺るがす元凶である。

民主党は、マニフェストにも明記するように、政権交代してもすべての国際約束はいったんこれを引き継ぐ。その上で、核とミサイルの脅威を増大させる北朝鮮や、軍拡著しい中国、復活を遂げたロシアなど我が国周辺の戦略環境の変化をもう一度精査したうえで、新時代にふさわしい強固な日米同盟を確立するために、地位協定や米軍再編協定などタブーを排しすべて抜本的に見直していくことになる。もちろん、このプロセスの目的は、日米同盟の弱体化ではなく、あくまで強化するのであり、持続可能な同盟関係を再構築しようとするものだ。その際、最低限沖縄県民の皆さまに約束できるのは、「沖縄県内に新たな米軍基地施設を造らない」との一点である。自民党政治家たちの土建利権で決まった普天間基地代替施設の辺野古への移転は、利権としがらみを排した立場で抜本見直しして行きたい。

(4)北朝鮮特定貨物検査特措法の成立を進めた自民党に対し、これに反対した民主党。ちょっと待った! そもそも、この法案は3年前につくっておかねばならなかったものではないか!北朝鮮が最初にミサイル連射し核実験を強行した3年前、我が国は国連安保理を舞台に、北朝鮮に対する「拘束力ある」制裁決議採択を主導した。そして、このときの安保理決議1718に「貨物検査」が明記された。しかし、当時、我が国にはこの安保理決議を履行するための国内法がなかったのだ。私は、委員会質疑を通じて、再三にわたり貨物検査を可能にする国内法制定を政府に督促した。しかし、政府はなんらアクションを起こさず、のど元過ぎれば熱さ忘れるとばかり、3年間この問題を放置し立法提案を怠ってきたのだ。

そこに勃発したのが、今回の長距離弾道ミサイル発射、核実験、中短距離ミサイル連射という一連の北の挑発行為だった。そして、今回は、前回よりもさらに拘束力ある国連安保理決議1874が採択されることとなった。そこで、政府はあわてて国内法制定、つまり貨物検査特措法を、麻生総理の解散宣言直前のどさくさに国会提出してきたのである。このような泥縄対応にもかかわらず、わが民主党は、党内をほぼ賛成で固め、特別委員会審議に真摯に対応した。しかも、衆参両院でなるべく早く結論を出すとの国対方針まで示してきた。しかしである。衆院での審議が佳境に入った7月13日(月)になって、肝心の麻生総理が「解散宣言」を出してしまったのである。自民党は本当にやる気があったのか、はなはだ疑問である。すなわち、貨物検査法案を葬り去ったのは、賛成を前提に審議に臨んでいた民主党ではなく、党利党略で凝り固まった麻生官邸なのである。この点だけは、はっきりさせておきたい。

もとより、北朝鮮に対する国連制裁を実効化するための国内法整備を怠ってきたのは、政府のみの責任ではない。立法府たる私たち国会議員の責任は重大であり、私自身この怠慢のそしりを免れるものではない。しかし、その責任を、選挙戦を有利に戦いたいとの一心で、挙げて民主党に負わせようとする自民党の姑息な姿勢は、甚だ残念だ。

いずれにしても、今朝の新聞各紙で正確に報道されているように、わが民主党の外交安保政策は、政権を担うにふさわしい極めて現実的なものである。私たちが戦っているのは、日本の主体性を失った自民党の対米追従外交であり、日米同盟の根幹を支えている米軍基地受け入れ自治体の切実な声を無視する姿勢であり、基地施設建設にまつわる土建利権主導の自民党政治家の体質である。これらのしがらみを断ち切るためにも、政権交代が何としても必要である。政権交代によって、我が国の外交安全保障政策を歪めてきたさまざまな利権やしがらみを一掃したい。