韓国・釜山で行われるAPEC首脳会議に向かう途中で日本に立ち寄ったブッシュ大統領が、東京ではなく、ひときわ紅葉の美しい秋の京都を訪れたことは意義深い。限られた日程ではあったが、日米首脳が高らかに同盟強化を世界に向かって(とくに中国に)宣言したことは喜ばしい。

しかし、小泉首相が記者会見で、「日米関係の緊密化を通じて中国やアジア諸国との良好な関係をつくることができる」と発言したことを見過ごすわけには行かない。同じようなことを首相は、先日、前原代表との党首討論でも言っていた。恐らく、これは彼の信念なのであろう。

倒錯した現状認識だ。日米同盟に過度に依存することによって、小泉外交は、米国との関係をかえって窮屈にしてしまっていることに気づいていない。近隣諸国との関係を疎かにしたまま、米国との同盟関係に全てを託すから、BSEにしろ、イラクにしろ、米軍再編にしろ、米国からの要求に片っ端から屈していかざるを得ない。しかも、アジアに確固とした外交的な足場を持たない今の日本は、米国にとって、決して戦略的に価値のある(つまり、魅力ある)同盟国とは映っていない事実をそろそろ認識すべきだ。

年末にかけての、前原代表の米国、韓国、中国歴訪による「現実的」野党外交をぜひ注目していただきたい。