前原代表の「中国脅威論」に党内外からの批判がかまびすしい。
事実誤認もはなはだしいので、ここできちっと反論(というか事実確認)しておきたい。

彼は、中国が脅威だとは、一言も言っていない。
17年連続で二桁の国防費の伸び率を続け、海空戦力を中心にハイペースで近代化を図り、日本を核搭載のミサイルの射程に収めている「中国の軍事力」が脅威(もしくは、それを脅威と感じている日本人が多い)と言ったまでだ。

この認識を撤回したり修正する必要などまったくない。

マスコミや批判者たちは、この発言から「軍事力」の部分を(故意か過失か)切り取って、あたかも前原代表が「中国脅威論」を叫んでいるかのようなイメージを振りまいている。はっきり申し上げて、フェアではない。

使い古された表現で恐縮だが、「脅威」は意図と能力で決まる。
中国の軍事力が「能力」として「脅威」に当たることは明白だ。

しかし、中国という国そのものが「脅威」であるかどうかは、その「意図」にも考慮を払わねばならない。中国側の「意図」は、(じつは甚だわかりにくいのであるが)中国指導部が現在の経済発展を自らの権力基盤の唯一最大の正統性と認識していることは間違いないから、その「能力」を対外政策、とりわけ我が国に対して、むやみやたらに振りかざしてくるとは考えにくい。つまり、国として「脅威」を構成しうる「意図」は現在のところ(将来については未だ不透明、不確実性が残るものの)有していないと考えてよいと思う。

しかも、中国側の「意図」は、我が国はじめ国際社会の不断の努力で、平和的で共存共栄の方向に誘導していくことも可能だ。それが、外交努力というものだ。そういった平和外交を前原代表は否定するどころか、より積極的に推進しようとしているのだ。批判者の皆さんにも、ぜひ色眼鏡をはずしていただき、真摯で精緻な議論を望みたい。