今日は、かねてから委員長と与党側筆頭理事に要望していた「米軍再編に関する集中審議」が実現し、民主党を代表して質疑の立ちました。麻生大臣、額賀長官ともに、かなり突っ込んだ答弁をしていただいた(ご関心の向きは、衆議院TVからVTRをご覧いただきたい)が、沖縄の普天間基地移設をめぐっては、どうしても納得が行かないので、今日は、私が以前まとめたメモに従って、これまでの日米協議の中で真剣に検討されてこなかった(が、きわめて実効性の高いと思われる)構想について明らかにしたいと思います。

普天間基地の移設先は、政府案では「辺野古崎沿岸案」であるが、これまでの経緯もあり地元の名護市が納得せず、こう着状態が続いています。以前から、私は、米軍再編をめぐる日米協議では、米側の議論に引き摺られることなく、日本側から主体的なアイディアをどんどん出すべきだと訴えてまいりましたが、現実はそうなっていません。その最たる例が、危険極まりない普天間基地の移設先です。

私見では、米空軍の嘉手納基地の広大なスペースに移駐すれば足りると考えています。嘉手納基地は、3500メートル旧の滑走路を2本持つ米軍最大の海外空軍基地です。空軍は海兵隊との同居を嫌いますが、それはお家の事情であり、政治決断さえあれば何とでもなる話です。以下、その理由などを書いたメモをここに公開したいと思いますので、ご意見、ご批判を賜れば幸いです。

「嘉手納統合案」について

 普天間代替施設については、日米政府間の再編協議において、「辺野古崎沿岸案」で日米合意がなされた(昨年10月末)が、地元の名護市は「辺野古の浅瀬」修正案を提起し、膠着状態に陥っている。このままでは最終合意に至る前に破綻してしまう可能性なしとせず、万一に備えて代案を検討する観点から、(SACO協議の初期段階で検討され斥けられた経緯はあるが)「嘉手納統合案」について改めて論点を整理する。

嘉手納統合案には、嘉手納基地北部の弾薬庫地区未使用部分を利用するなど複数のアイディアがあるが、ここでは最も現実性の高い「既存滑走路の南側にあるゴルフ・コースなどを潰してヘリパッドを新設する」案を検討する。

前提条件:
(1)米海兵隊・普天間基地を一日も早く閉鎖すること
(2)普天間移設が、新たな施設・区域の増加につながらないこと
(3)普天間移設が、米軍基地の整理統合の促進につながること
(4)移設に伴う基地再編が、抑止力の低下を招来しないこと
(5)海兵隊の駐留兵力の削減を伴うこと(※もとより当該移設とは直接関係ないが、兵力削減が沖縄県トータルとして負担軽減に直結し、移設先自治体に対する説得を補強することは明らか)

「嘉手納統合」案のメリット:
○確実に米軍基地の整理統合を促進でき、沖縄県全体の負担軽減に直結する。
○経費は、(海上施設に比べ)はるかに安上がり。
○工期は、環境アセスメントなどの必要もなく、(海上施設に比べ)大幅に短縮できる。
○(山を削ったり、海を埋め立てたりする必要がないので)環境問題や希少生物などに与える影響はほとんどない。
○SACO協議において、吉元副知事(太田前県政時代)が提唱した経緯があり、沖縄県の立場からも現実的な選択肢の一つと考えられる。
○米軍基地の空軍、海軍、海兵隊による統合運用は、ラムズフェルド米国防長官が推進する「米四軍統合の推進」という方針に合致する。
○米海兵隊としても、(名護に比べ)居住地からの通勤時間を大幅に短縮でき利便性が高い。


克服すべき問題点(および対応策):
○固定翼機と回転翼機(ヘリ)との共同使用は、トラフィックの密度が増大した場合に運用上の混乱を招く。<<<反論:ハワイのカネオヘ基地ではヘリと固定翼機の共同使用が行われている。また、有事における来援部隊受け入れのための飛行場は別途考える(例えば、下地島飛行場、航空自衛隊鹿屋基地、那覇空港など)。
○近接する嘉手納町・北谷町市街地における騒音対策が必要。<<<対策:防音壁の構築で相当程度解消される。
○外来機を含む固定翼機による騒音被害が増大している現状での「新たな基地負担」に対する地元自治体の抵抗は厳しいものがある。<<<対策:外来機の離発着を県外・国外に分散することにより、嘉手納基地における離発着回数を総体として削減することができれば、十分に交渉の余地がある。(なお、嘉手納町長は、公式には新たな基地負担につながる普天間基地機能の嘉手納受け入れには反対の姿勢を貫いているが、「全体として飛行回数(つまり騒音被害)が削減されれば、兵力の構成要素(つまり、空軍か海兵隊か)は問わない」との非公式コメントは参考になる。)
○「普天間」に代わって、「嘉手納」が基地反対闘争の政治シンボル化する危険。<<<対策:沖縄県全体としての米軍基地の整理統合を促進し地元負担の軽減を実現する「アクション・プログラム」の策定で納得してもらうしかないのではないか。
○1996年時のような米空軍の抵抗が予想される。<<<反論:米軍トランスフォーメーションの中核理念である「米四軍の統合運用」の流れの中で、米空軍には再考を促すべき。

結論:
 いずれにしても、「嘉手納統合案」は、1995-96年のSACO協議の際に一度検討されて放棄された案である以上、これを改めて提案する際には説得力のある理由を明示する必要がある。また、嘉手納統合案では、「事故・騒音の防止」を完全達成することができないため、沖縄における基地返還運動の次のターゲットとして「嘉手納」が浮上する可能性は軽視し得ない。

 であるとしても、上で検討したように、「嘉手納統合案」がキャンプ・シュワブ(名護市辺野古)地区への移設が難航した場合の現実的かつ有力な選択肢の一つである事実は揺るがない。

 しかも、朝鮮半島情勢次第で、米海兵隊の実戦部隊が沖縄に駐留し続ける根拠は、今後低下することはあっても増大することはないであろう。もちろん、常時駐留しない場合でも、沖縄における海兵隊の訓練は継続し得るし、有事来援に備えて事前集積施設(船)を整備し、来援部隊・航空機を受け入れる施設を(日米防衛協力のガイドラインにしたがって)予め確保するなど適切な代替措置を講ずるべきである。

 また、日米同盟のトランスフォーメーションが深化し、日米における軍事的なRMC分担の進展を視野に入れれば、やがて海兵隊が担っている役割の相当部分を日本の陸上自衛隊が肩代わりして行くことになるであろうから、海兵隊のヘリ部隊が嘉手納に共存する期間はせいぜい10-15年ということになろう。

 要は、沖縄県民に対して、基地の整理統合プロセスを明らかにするような現実的かつ着実な「米軍基地整理統合に関するアクション・プラン」を策定することが早急に求められる。その柱は、人口の3分の2が集中する沖縄県の嘉手納以南における米軍基地機能を一掃し、(中北部への交通網を整備するなどの振興策と引き換えに)米軍基地の自衛隊との共用を進めつつ(これにより、米軍専用基地の75%が沖縄に集中する現状を打開できる)、米軍基地機能を沖縄県中北部へ集約することである。前述のとおり、10-15年のスパンで海兵隊が撤退していくことによって、中北部に集約された米軍基地機能の大半は沖縄県に返還されることとなるであろう。

以上です。いかがでしょうか。また、寄せられたコメントに、民主党内の特定の議員の言動に関する懸念や非難が多く見受けられますが、私とは見解を異にしていることは言うまでもありませんが、そういう方が何人か党内に居るからといって、それをもって「民主党は・・・」と短絡的に結論づけないで欲しいと思います。そういう特殊な見解が、民主党を支配する可能性はまったくないと信じております。