昨日の晩から沖縄入り。
北京から戻った前原代表と合流。
今回の米軍再編の焦点の一つであるキャンプ・シュワブ内への立ち入り視察をはじめ、稲嶺県知事や、普天間基地移転先の岸本名護市長らと懇談を重ねる。

深刻なまでに前途多難である。
日本政府に対する沖縄県(民)の不信感は以前にも増して深まっている。
こんなことでは、普天間移設が実現するはずがない。
普天間が止まれば、米軍再編全体がストップする。
言い換えれば、この再編を沖縄県民が受け入れなければ、他の基地関連自治体が受け入れる余地はない。

不信感の最大の原因は、「小泉流」の乱暴な物事の進め方にある。
他の改革推進においては、既得権益との戦いであるから、コンセンサス方式ではうまく行かないのは理解できる。しかし、住民の生活圏を奪うことにつながる基地の受け入れに理解を求めるこの問題においては、地元の合意形成は不可欠であり、どれだけ丁寧にやるかで成否が決まる。(もちろん、延々と説得し続けるべきとは思っていない。物事には必ずデッドラインとその見極めが必要となる。)

しかし、今回の再編協議のプロセスでは、沖縄県も名護市も完璧に無視された。
のみならず、政府は、「辺野古の沖合2000 mに軍民共用の飛行場を建設する」との6年前の閣議決定すら無視したのである。その間に、さまざまな案がいくつも浮かんでは消えた。沖縄県内12ヶ所を選定して環境や騒音、軍事上の必要性などあらゆる角度から検討を加え7ヶ所に絞り、最終的には、辺野古沖に場所を定め、3工法8案を検討した結果、決定されたのである。今回の日米合意の中間報告に盛り込まれた新たな移設案(沖合ではなく辺野古沿岸に建設する案)も、じつはすでに検討され不採用となった案の一つなのだ。沖縄県からすれば、「新たな案」でもなんでもない。

しかも、この決定に至る過程で、県や市に対する丁寧な説明や、打診や、瀬踏みや、根回しや、説得の努力などは一切行われなかったのだ。信じられないことである。同じことは、原子力空母の配備が発表された神奈川県や横須賀市、空母艦載機の移転先に決まった山口県や岩国市でも起こっている。また、米軍機能の強化や地元負担の増大にはつながらないものの横田基地への航空自衛隊司令部移転をめぐるケースでも地元への説明は軽んじられてきた。

キャンプ・シュワブから辺野古沖の美しい海を見ながら、思わずため息をついてしまった。ふと横を見ると、キャンプ内の兵舎地区で新しい住宅の建設が進んでいる。今回決まった「沿岸案」によれば、いま建設中の住宅群は、すべて無駄になるという。この建設費は、もちろん国民の税金から「思いやり予算」を通じて賄われているのである。まさに、場当たり、その場しのぎ。

こんなやり方が、「わが国の平和と安全のため」などといった抽象的な理由だけで地元の方々に受け入れられるはずがない。小泉政権は、「改革推進」の華々しいイメージの陰で、とてつもなく大きな負の遺産を将来の政権や国民に残そうとしている。これを挽回する手立ては、非常に難しいが、ないわけではない。いちど失った信頼を回復するためには、それをひっくり返す分より大きな力を要する。それは、外務省がこれまで逃げ回ってきた課題に着手すること。ずばり、日米地位協定の改定だ。

以前も書いたが、かねて基地を抱える自治体から要望のあった地位協定の改定にコミットすることによって、地元の負担軽減に向けた政府の真剣さを示すのだ。そして、基地管理権はすべて日本に移管、いや返還する。こうして初めて、基地問題は、日本人の手に取り戻すことができる。欧州においては、半世紀以上にわたり当たり前に実践されてきた国際常識だ。事態はそれぐらい深刻だということを、小泉政権もぜひ理解してほしいもの。