憲法96条に定められている改正手続きを施行するための手続法の制定を60年以上も放置してきたのは、国会(議員)の怠慢である。したがって、よほど問題がない限り、この手続法たる国民投票法案は、一日も早く国会議員の圧倒的多数で可決すべきものである。

衆議院の憲法特別委員会の筆頭理事であり、民主党の憲法調査会長も兼ねる枝野代議士のリーダーシップと粘り強いネゴシエーションの結果、国民投票法案については、自民党側が大幅に譲歩し、国民への周知徹底を図るため告示期間を十分に取り、白票まで賛成に数えるなどといったいかがわしい試みは斥けられ、より多くの国民に参加してもらうため投票権も18歳まで引き下げられ、ほとんど民主党案が丸呑みされる形で推移している。与野党協議では、もう一歩のところまで来ているのだ。

しかし、ここへ来て、何の思惑かとんだ勘違いか、民主党が国民投票法案に反対するかのような誤った空気が醸成されつつあることに眉をひそめざるを得ない。

いわく「国民投票の対象に憲法改正だけでなく、他の重要な国政課題も含む一般投票を認めるべきで、それを与党が呑まなければ反対すべきだ・・・」

勘違いもはなはだしい!
悪乗りもいい加減にして欲しい。

そもそも、現行憲法が採用している国家意思の集約手段は、代議制の間接(議会制)民主主義である。これに対し、「国民投票」というのは、いうまでもなく直接民主制の意思集約手段である。日本国憲法は、基本的には間接民主制を採用し、例外として、最高裁判事の審査と憲法改正の承認のみを直接民主制にかからしめているのである。したがって、それ以外の争点も国民投票にかけるというのであれば、それは紛れもなく憲法改正の問題となる。憲法を改正せずに下位法である国民投票法で直接民主制を採用使用とするなら、それこそ憲法違反だ。

国民投票法案の成立を機に悪乗りして、味噌も糞も一緒くたにしてはいけない。
党内論議を通じて、このような的外れの要求を淘汰し、国民投票法案成立に向けた与野党協議を加速させなければならない。

そこで残された論点は、憲法改正案を一括して国民投票にかけるのか、逐条で賛否を諮るのか、ということになる。これは、きわめて重要なポイントで、一括方式では、たった一つの条文の改正案がネックになり法案全体を拒否(あるいは、気がかりな条文がいくつかあるにもかかわらず不本意ながら賛成)せざるを得ないという矛盾が生じてしまう。これを回避するためにも、逐条改正方式で決着すべきだ。この点で、与党が譲歩してくれることを切に望むものである。