さて、第3回定例会がはじまっておりますが、先週行った景観行政視察の調査をまとめておきたいと思います。

神奈川県内でもとくに景観まちづくりの取り組みが進んでいる秦野市、小田原市、真鶴町をそれぞれ訪れ、担当職員の方にヒアリングし市内を視察してまいりました。

●秦野市

県内唯一の盆地という地形を生かし、とくに人々の日常生活の中で美しい生活環境、景観を創り出していこうとする『生活美観』に力を入れて取り組んでいます。

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例えばよくある天然ガスタンクも緑ではなく落ち着いたベージュ色に。

秦野市といえば、以前に大手全国チェーン店のイオンが、看板を景観に配慮したものに作りかえたということで新聞報道もされました。

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私は、屋外広告物条例などにより、さぞ厳しい独自ルールを適用しているのかと思っていましたが、実際は事業者と行政との協議により景観まちづくりの理念を理解してもらい、ご協力いただいているのが実態でした。

秦野市の西大竹から堀川へと続く桜並木通り沿いの全国チェーン店の看板。

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企業のCIカラー(企業特有のシンボルカラー。コーポレートアイデンティティー(CI)の一要素)を優先するのではなく、地域のまちなみに合わせて、ここでは自然の桜並木よりも人工的な看板の方が目立ってしまうことのないように、彩度(色の鮮やかさ)を下げたり、彩度色を減らしています。


なぜ協力してもらえるのか?

それは、市民への意識啓発が進んでいるからだと思います。
たとえば秦野市では月に2回、景観だけの特集号を広報誌として市民に配布しています。
その景観まちづくり特集号には、景観に配慮された事業者の事例を写真つきで紹介したり、個人のお宅でも庭先演出部門など、素敵なお庭やガーデニングをしている方を表彰したりし、広報誌に掲載しています。

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こうした取り組みにより、企業側にとっても市に協力することで企業イメージの向上につながるというメリットがあります。


●小田原市

江戸時代から城下町として栄えてきた小田原市ですが、駅前周辺はビルの看板が増え続け、秩序を失い落ち着いた街並みとは言い難い状況になっていました。
行政指導といういわゆるお願い行政では守ってもらえない事例も出始め、市域全域を対象とする景観計画では全国初の景観法に基づいた景観条例を策定しました。

これにより、今では駅周辺も城下町にふさわしい風格ある素敵な街並みへと変貌を続けています。

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以前はけばけばしい看板で溢れかえっていた駅ビルもだいぶ目立たなくなってきました。


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コカコーラ社の看板も、赤字と白地を反転させることで、小田原城がきちんと引き立ちます。


小田原市の取り組みで、とくに良いと思ったものは、景観ルールに一定のっとった店舗の改築には市が補助金を出すというものです。これにより、さらにワンランク上の景観に配慮したお洒落な店舗がいくつか出現しています。

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やはりこうしたちょっとした仕掛けづくりが大切であると思います。


●真鶴町

真鶴町は小田原の先にある人口が一万人にも満たない小さなまち。
この町は『美の条例』という本で一躍有名になり、美の町とも呼ばれています。
しかし、決してモダンな建物や歴史的建造物が建ち並ぶ街並みというわけではありません。
「山の仕事」、「海の仕事」そうした人々の生活風景を大事にする、そこに美しさを見出した街です。

真鶴町まちづくり条例で定められた『美の基準』とい8つのデザインコードにしたがって美しいまちをつくりあげていこうとしています。

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こうしたデザインコードでしばしば問題となるのが、言葉の定義は難しいということ。

数値的な目標値であれば、共有もしやすいが、言葉で美を定義していくと、主観的なものになり現実的にはなかなか守ってもらえないという現場での声を聞きます。

しかしながら、真鶴町では徹底して言葉にこだわり、この美の基準では真鶴町の美しさについて、様々な角度から述べられています。


例えば・・


『キーワード』・・夜光虫

『前提条件』 真鶴や岩の海。
ほんのひと昔ほど前、夜の海は夜光虫の舞台であった。
月夜に泳ぐひとかきに、幾千の光が夢のように漆黒の舞台に舞い散った。
今、それは本当に嘘のような話になってしまった。
人々がどんなに努力しても、神はもうこのような世界与えてくれなのか?

『解決法』 真鶴町がマンションやリゾートの林立する豊かさと
「少し違う豊かさ」を求めようとするなら、昔をふりかえれば良い。
人々は皆それぞれの思いで生きてるが、夜光虫の海に思いを馳せて「美」を感じない人はいない。
それぞれの思いと、それぞれの努力があれば、夜光虫の海は必ずよみがえる。

( 真鶴町まちづくり条例美の基準p160より抜粋。)


真鶴町コミュニティーセンターの建物はこのデザインコードが反映され、理念を共有する場として、大きな役割を果たしています。


どこか懐かしい感じがする建物。

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地場植物、地場石材など地元の自然素材でつくられた建物はとても居心地の良い空間でした。

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古い大きな樹。

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建物の内部。

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中庭

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地面にはガラス玉が埋め込まれていました。

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こうした理念が街並みすべてに具現化されていくには長い時間がかかるかもしれません。

しかしながら、こうした取り組みをまったくやらない地域と、少しずつでも取り組んでいった地域とでは50年後、100年後、大きな差が出てくることでしょう。


神奈川県内は他にも藤沢市江の島地区、横浜市みなとみらいなど、全国的にみても先進事例にたくさん恵まれている地域です。他の自治体の先進的な取り組みを参考に逗子のまちをさらに良くしていきたいです!

最後に、インタビュー調査にご協力いただいた小田原市、秦野市のご担当職員の方にはこの場をお借りして御礼を申し上げます。ありがとうございました。