長崎のまちなかには、写真のような「エサやり禁止」ポスターが貼られています。行政、自治会など公的な名前によるもの、あるいは個人の家の前に「ここでねこにエサをあげないでください」と書かれた貼り紙もあります。

 ねこ調査で歩いていると、いわゆる「ねこ嫌い」の人から、いかにねこの被害に困っているか、訴えられることがよくあります。しかし、話をじっくり聞いていくと、意外にも「ねこは嫌いじゃない」と言われる「ねこ嫌い」さんも多いのです。

 えっ? と初めは思いました。「ねこなんかいなくなればいい!」などあたかもねこが大嫌いのような口ぶりなのに「ねこが嫌いではない?」どういうこと?

しかし、何度もこのようなねこは嫌いではないけれども「ねこ嫌い」さんに出会って行くうちに、無責任にエサを置いていく「エサやりさん」が嫌い、エサやりをやめてほしいのだとわかってきました。

ねこの問題を解決する一つの方法として、地域ねこ活動やTNR(避妊去勢手術したねこをもとの場所にもどす)が、勧められています。長崎市でも「まちねこ不妊化事業」として飼い主のいないねこを避妊去勢手術するための補助金制度があります。ねこの避妊去勢手術は、狭いエリアにたくさんのねこが密集している場所で、ねこの数を減らす効果はあります。しかし、数を減らすだけでは根本的なねこ問題の解決にはなりません。

エサやりさんの中には「ここのねこたちは避妊去勢手術を済ませているからエサをあげてもいい、ねこは死んでしまえというねこ嫌いのために苦労する」と言われる人もいます。確かにねこが嫌だから苦情が出るわけですが、そこからもう一歩踏み込んで「なぜ、ねこが嫌いですか?」と聞いて欲しいと思うのです。嫌うからにはそれなりの理由があるはずです。そして、その理由を解決する方法を話し合うために、批判するだけでなく歩み寄って欲しい。そんな理想は通用しない、と言われそうですが、避妊去勢というある種の負担をねこに強いるのなら、人と人も向き合わなければ、町ねこに申し訳ない気がします。