病んでん堂 1 | クリーチャーガレージキット人間のブログ

病んでん堂 1

パソコンが今ほど発展していなかった頃
趣味で友人と映画のチャット部屋を作り、
よく見知らぬ人と会話していた。

ある時、
特に「病んでん堂」と名乗る男性と仲良くなり、
映画だけでなく漫画や本などでとても話が合ったので
もう一人の常連も呼んで実際に会ってみることになった。

見た目は30代前半のメガネのおじさんで、
少し文学的というか、
外見に気を使っているのかいないのか
わからないような感じ
と聞いていた。
ずいぶん具体的だと思ったが
実際会うと、
本人が言っていたまんまの容姿、
つまり頭はボサボサだが
服装は若干昭和をにおわすなぞのおしゃれな
着こなしだったので
変に自分をわかっている人だなあと
関心した。


とりあえずファミレスに行き、
もう一人待ち合わせていた
「NEKO13」という女の子を待つことにした。

待っている間に話は盛り上がり、
NEKO13が来た頃には
自分達はすっかり打ち解けていた。

その楽しそうな様子からか、
途中から来たNEKO13もすぐに打ち解けた。


ちなみにNEKO13は、
ちょっとロリータのような服装で
今で言う不思議ちゃんな感じだ。

その会は楽しく終了した。


会のすぐ後に病んでん堂に
恋愛の相談をもちかけられた。
相手はNEKO13だった。

病んでん堂はいいやつだったので
少しだけ手伝おうと思った。

NEKO13にそれとなく気持ちを聞いてみると、
彼女もまんざらではなかったようなので
それを教えてやると、
しばらくして二人は付き合い始めた。


しかしそれから1ヶ月もたたないうちに
チャット部屋にNEKO13がこなくなった。
まあ、チャットで会話しなくても
リアルで彼氏に会えるので
別にくる必要がなくなったのだろうと思った。

しかし、病んでん堂は、
「急に連絡が取れなくなった」
と悲しんでいた。
おっと、NEKO13に
ほかに男でもできたのだろうか。
だがそんなことはいえない。

その日を皮切りに、
毎日のように
病んでん堂の悩み相談ばかりを
聞かされるようになった。
内容は
いかにNEKO13が良い娘だったのか。
という話ばかりだった。
「外で食べるご飯も、
必ず割り勘してくれるんだよお」
「帰りおくるって言っても、遠慮するんだ」
「俺の話をすごい興味津々で聞いてくれるんだ」

はいはいと、少々うんざりしていた頃、
チャット部屋に別の女の子が参加して
居座るようになった。

名前はKUMIKUMI。

KUMIKUMIも大の映画好きで
積極的であり
あっという間に親しくなったので
みんなで会う事になった。


自分、友人、病んでん堂、KUMIKUMIで
またファミレスに集まった。

KUMIKUMIは
20代 広末涼子似と言っていたので
かなり期待したが、
実際はどうみても30過ぎで
ハマグリのような顔をしていた。
しかし彼女は明るく楽しい女性だったので
すぐに打ち解けた。

会が終わり、
いつものようにチャットを楽しむ仲になった。
しかし、彼女もまたある日突然こなくなった。

チャットのように
文字でしか相手との接点をもてない
コミュニケーションツールの場合
飽きると
あれだけ仲がいいようでも
挨拶もなくいなくなっていくのかと
少々悲しい気持ちにはなったが、
確かにそういう意味では
割り切ることも簡単なツールだと思っていたので
誰かがかけても、気にしなければ
そのうち忘れるのだった。


その後も病んでん堂、他数人で
気ままにチャットを楽しんでいると、
ある日 デビットリンツという
ハンドルネームの友人から
「私です、NEKO13です」という
ダイレクトメッセージをもらった。
デビットリンツは、そのメッセージの
1週間前くらいから出入りしていた人で
すっかり男だと思っていた。

NEKO13と連絡がとれなくなって
そんなに時間はたっていなかったが
妙に懐かしい気がしたのと、
聞きたかったことがあったので
電話で直接会話してみることにした。


「久しぶり。なんで急に連絡取れなくなったの?」

そう聞くと、電話越しに小声で
「下田く・・・じゃなかった、
病んでん堂さんの話をしていいですか・・・」
そう言って彼女は語り始めた。