からて VS A君 その2 | クリーチャーガレージキット人間のブログ

からて VS A君 その2

A君の頭に自分の蹴りが入った。

しばらくして、起き上がるA君。

彼の顔は青ざめてた。


その後もしばらく組み手を続けたけど、
出す攻撃、狙う技、殆どの自分の攻撃があたるので、
手加減が必要だった。

「A君今日はさ、ちょっと暗いし、運転して疲れてるから
もうやめようよ」

ようやく切り出す理由を見つけられた自分の一言で、
彼とのスパーリングは終わった。



気まずい雰囲気が続き、
A君は車で自分達を家に送ると、無言で帰っていった。



しばらく、なんとも釈然としない自分がいた。

釈然としない理由は・・・

ここからは、
生意気に思われる気がするので
あまり気がすまないけど
ありのままに書きます。



そう、理由はひとつ。
自分でもその理由には気付いていた。

本来はきっとうれしい理由の筈。

A君と自分の差が、そこまで開いてしまっただけだった。


かたや怪我や恐怖と闘いながら、道場に通い続けた自分。
かたや自分で決めたメニューを信じて鍛えていたA君。


格闘技は個人競技のようで、実は違う一面がある。

それは、練習だ。


根性も体力も技術も、一人では殆ど鍛え上げることが出来ない。
相手がいて、教えてくれる人がいて、初めて技術は向上する。

自分ひとりで、ちょこっと経験した技術や本を元に練習して
強くなることは可能でも、それは素人や格下相手の話。

実戦経験のある相手には殆ど通用しない。
鍛えることと、闘うことは別物。

先輩の怖い攻撃を受け続け、
自分の攻撃を当て続けを繰り返した結果、
1年ほどで技術レベルが全然変わってしまった。



本来であれば喜ぶべき事、
自分を褒めれる事であったが・・・


A君に自分の技をぶち込みまくり、
自分の強さを改めて確認した!
という気分にはとうていなれなかった。

アメリカに来て自分にカラテを教えてくれたり、
きつい稽古の中励ましてくれたり、
色々な技術を教えてくれたA君。

なにより、自分がカラテを始めたきっかけを作ってくれたのは
A君に他ならない。



彼に自分の力が勝る、それもカラテで。


それは決して気持ちのいいものなんかじゃなく、
自分の中の、
なにか信じていたものが崩壊するような、
すごく嫌な感覚だった。


格闘技を追及する人たちからすると、
「その程度でなにが」と笑われるかもしれないが、
その時の自分の心情は、
本当にカラテをする目標を失ってしまったくらい
大きな出来事だった。


しかし、そのショックからわれに返ると、
自分には救いがある事に気付いた。


既に自分にとってのカラテには、
A君だけではなく
道場の先輩、後輩という新しい仲間が出来ていたという事。


自分のカラテ道にはA君以外の居場所があった。

なにかひとつの事を続けるのは、
なんて幸せなことなんだろう。
改めて実感した。


しかしA君はすごく落ち込んだんだろう。
自分より格下だと思っていた相手に負けるときほど、
悔しいものは無い。


それ以来、
毎週のように遊んでいた彼からぱったりと連絡がなくなり、
しばらく音信不通になってしまっていた。




自分も何故こんなことになったんだろうと、
激しく後悔していた。



それから3ヶ月程たったある日・・・・



A君から連絡があった。
「またどっか遊びに行こうぜ」 という連絡だった。

彼との付き合いは続いたけど
この時からお互い、カラテの話は極力避けていた洋に思える。



5年程たった。A君とカラテの話をする機会は無かった。



自分は道場に通い続け、
指導を任してもらう立場になっていたそんなある日。




自分の道場に入門者が来た。



A君だった。


A君は、「一緒に極真カラテをやろう」という約束を
忘れていなかった。


そして、A君は自分の後輩になった。



格下の相手に負けたこと、
過去自分が教えていた人間の後輩になること、
開いた差は中々埋められないこと。

自分ではとても耐えられないような状況。



そういう状況になる事をA君が理解した上で入門したのは知ってる。



今は週2回、仲良く彼と練習をしている。




A君は、今でも尊敬できる親友の一人だ。




ありがとう。


押忍。