汁との戦い2
八景島の近隣にある海岸に向かう道中、
何故か無性に富士山に行きたくなり、
夜中をかけて自分、A君、汁さんでドライブした。
海岸についた頃には明け方近くなっていた。
まずは、汁と自分が戦うことになった。
アメリカ時代、
汁はおかしな大会に出ていたとはいえ
当時の自分からしたら強いやつという存在だったので、
潜在意識のどこかで
「こいつは怖い」と思い込んでいた。
向かい合ったときの緊迫感といったら、
もうスパーリングの域を超えて、
普段やられている先輩の前に立ったような感覚、
足元がふわふわで、しっかり立てないような感覚だった。
「カモーン キャズアキ(かずあきのフランス発音)」
汁は笑っている。
横ではA君が見ている。
もう情けないやら、かっこ悪いやら、いろんな感情が噴出してきて、
がむしゃらに、いつものようにボディに思いっきりパンチを打ち込んだ。右の大降りフックだ。
ボスッ!と汁の腹にめり込んだ。
その瞬間
「オーマイレバアァーーー!!!!(俺の肝臓が!)」
と、何故かレバーの存在する逆側の左腹を押さえ、
(自分がたたいたほう)その場に座り込んだ、次の瞬間!
ブリブリブリブリブリブリブリ!!
けたたましい音と共に猛烈な悪臭が鼻をつんざいた!
え?
一瞬A君と顔を見合わせた。
暗くてよく分からなかったが、よく見ると胴着のすそから
液体のような、固体のような物があふれ出ている。
まあ、それがなにかはすぐに分かったけど。
ちなみに、その後12年間のカラテ人生の中で
パンチでウンコを漏らした人は、一度も見たことが無い。
むしろ汁の漏らし方は、パンチをするギリギリまで
脱糞のチャンスを伺っていたとしか思えないくらい
ベストなタイミングだった。
汁は、汚れた胴着と尻を洗うべく、海に入っていった。
時刻はもう朝の4時~5時頃。
朝日に照らされて、海がキラキラとオレンジ色の光を発している。
そんな中徐々に、海中で尻を洗う汁のシルエットが映し出された。
その手前の砂浜を犬の散歩をする人たちが横切っていた。
尻を洗い終わった汁は、
あろうことか、海中で胴着のズボン及びパンツを脱いで、
下半身裸の状態で陸に上がってきた。
今自分がいる状態は、はたから見ると
海外ゲイ雑誌の撮影に朝早く来たクルーのような
そんな雰囲気なのだろうか。
A君も自分も完全に言葉を失っていた。