カラテ うしろむき
組み手(スパーリング)というのは危険で、
現在はまず攻撃を受ける練習を行って、
次に攻撃の練習、徐々に両方をするようになって
初めてスパーリングに加われるのだけど(危ないんで)
自分の頃は、入って3日目に組み手だった。
受け方も攻め方も全く分からないまま、
とにかく先輩に殴りかかっていく。
1分という短い時間の中でなんだけど、
思いっきり動くと大体30秒もしないで息が切れる。
普通、30秒は短く聞こえるんだろうけど、
無酸素運動だときつい。
そして、実力差がありすぎる場合、相当長く感じる。
ただ、こっちが攻撃してる間、先輩は何もしてこない。
顔や急所以外は防御もしない。避けもしない。
「残り10秒!」という声で、
やっと終わるー!と思った瞬間、先輩の攻撃が来る。
まあ、大体一撃で終わる。
顔だと確実にぶっ倒れるし、他の部位でも痛くて倒れる。
受け方を知らないのであたりまえだけど。
たってられる場合があるけど、
またやられるのがいやだったので自分は倒れた(笑)。
クラスが終わると、
通常はその後筋肉トレーニングや柔軟運動なんかして帰るんだけど、
ある日先輩が、
「じゃあおまえら壁に向かって黙想」
といった。
黙想とは、正座して目を閉じる行為。
クラスに出ていた同期(白帯、10級~8級くらいの素人)
10人くらいが、全員壁に向かって正座をさせられた。
???
壁に向かって正座をしてる、さらに目は閉じらされてる。
道場の真ん中に先輩は立ってるようだ。
「じゃあ、玄関の方のやつからこっちきて」
薄目を開けてみてると、
道場の一番端っこ、玄関のところに座ってたやつが先輩に呼ばれた。
少し音がして、その後「ううううう!」とうめき声。
直ぐに先輩が
「次」
次のやつが呼ばれた。
眼球だけで見える範囲は横ギリギリで、
頭は動かせないので後ろが向けない。
また音がして、「ううううう・・・」と声。
どうやら、道場の端から呼ばれたやつが組み手をさせられて、
やられているようだ。
何故かこれは、本当に怖い!
目をつぶってる闇の中、目を開けても目の前は壁。
うめき声だけが聞こえて
その順番がどんどん自分に近づいてくる!
自分の番になって、結局いつものように倒されたんだけど、
先輩に向かい合うまでの恐怖心は、いつもの倍以上だった。
これなんの稽古??