芯に尾形勇次公安次長から連絡が来た。
「少し相談したいことがあるから、明日福岡に行くから会えないだろうか?」
「分かりました。
明日何時の飛行機で来られますか?
うちの松浦に御迎えにいかせますから?
10時20分着のJALですね。
分かりました。
それでは明日天神町の水火土機関の本部で御待ちしています。」
翌日、芯とチキとヒミ、モモと尾形公安次長と松浦隊長を交えて対談していた。
「次長から相談があると聴きましたが、この我々のメンバーは一身同体ですので、御心配なさらずに何でもお話し下さい。」
「神下先生、分かりました。
実は、これはまだ秘密事項ですが、近く内閣が、いや総理大臣が交代します。
それで、今の官房長官が代りの総理大臣になるということが、自佛党内で決まったようです。
それでお宅の水火土研究所は一応安泰だと思われますが、我々公安部は、恐らく公安委員長が交代することになられると思います。
問題は今の自佛党の三木幹事長が新しい党の人事で居残るか?あるいは交代するかで、大きく代わると思うのですが、対米、対中政策の分岐点となると思うのです。」
「そうですか?
それは大いなる重要事件ですね!
それで?」
「はい、角田外務省審議官からは、どうも三木幹事長は残る、再任されるという情報を戴いていまして、その件で、アメリカのNSAのウオーレン、ノーマン次席代表から内密に連絡があり、三木幹事長の親中政策を新総理大臣に要求する可能性があることを非常に心配しておられて、スパイ天国の日本の規制を強める様にしないと、これ以上、日本国の優秀な技術を搾取され続けては、将来必ず起こる米中戦争時に日米同盟国の頼りとする日本側の行動に支障が起きると懸念していることが伝えられて、どう処置すべきか?
今の我々の弱腰の公安調査庁では、各国の日本でのスパイ行為を完全に阻止することは出来ないと私は心配していまして、神下先生に御相談に伺った訳です。」
「ふーむ!
モモどう思う?」
「はい、私のところでも、あきれる程の各国のスパイ組織の動きが既に情報として、捉えられていますが、酷いものです。
日本の政府内には、多くの国家公務員とスパイ達との親密な交際の証拠が上がっております。
あの顔認証追跡設備に記憶されています。」
「そうですか?
そんなソフトをもう開発されておられるのですか!」
「はい、申し訳なかったのですが、政府高官だけで無く、一事務員から、大臣、議員の全員を既にマーク済みです。
中国等は、一般の学校や、研究所の優秀な学者、技術者を豊富な金や、地位や、ハニートラップで、手なずけて、自国の研究所に誘ったり、情報や、技術を盗んでいるのですよ。」
「そのことは証拠をもう持って居られるのですか?
その機関は何処にあるのですか?
このビルですか?
何人位の所員がおられるのですか?」
「いえ、ここではありません。
所員は僅かに開発部員も含めて、今は35人しかいません。
情報はほっておいても、自動的にAIで、選別して記録していますから、
申し訳ありませんが、次席が今我々と、こうしてここで会議中のことも、記録されていますよ!」
「へー。
これは驚いた。
神下先生、我々の代わりに日本国から、各国のスパイ共を追い出してはくれませんか?
我々は表にいて、無能ぶりを晒して、奴等を安心させていますから!」
「そのことは、私達もそういう話が必ず来ると、この水火土研究所を設立する段階で検討されていましたから、準備しておりました。」
「そうですか?
それでは引き受けてくれますか?」
「ちょっと待って下さい。
先ず、角田外務省審議官と土井公三検察審議官に相談されて、御二人から、私達に指令される様に話をされて下さい。
次いでに、次の内閣官房長官の了承も頂きたいですね!
今の官房長官が新総理大臣になられるのならば、総理大臣は既に今、官房長官の身で協力を戴いているのですから、引き続き賛成して下さるだろうから、新官房長官にも協力をお願いしておいて下さい。」
「了承しました。
ここの運営費は官房調査費から出て要るのですか?」
「はい、内閣官房、外務官房、検察官房の調査費から戴いております。」
「そうですか!
それでは、誰も調べようがありませんね!
政府内の予算上には出ないのですから!
とにかく宜しくお願いします。
あまり時間を費やすことは日本国にとって、好ましくありませんから!」
「分かりました。
指令が出れば直ぐに行動する様に準備しておきます。」
この会議から一週間が過ぎた日のテレビニュースで驚いた事件が報じられた。
『公安委員長、毒殺される!』
と報じられたのでした。
情報によれば、公安委員長の山岡光男氏が家族と横浜の中華街の中華店で食事をした後で、自宅に戻ってから、吐血して、救急病院に運ばれたが、死亡が確認された、という内容だった。
さらに死因は毒殺の可能性があると伝えていた。
この情報を聴いて、直ぐに芯はモモに山岡公安委員長のこの一週間の情報を抜き出す様に命じた。
一時間後、資料が芯に届けられた。
(つづく)