(一)糸島半島、P3

『神の言葉を神読、つまりサニワすることは難しいことです。
ある宗教団体では、こんなことがありました。
教団員の息子が、ある日、漁に出て遭難しました。
捜索隊が出て捜したのですが発見されませんでした。
10日以上捜しても発見出来ず、捜索を打ち切るかどうかということになり、困った家族は、教祖に伺いをたてました。
すると、神託が降りました。

「死んでおらん」

と一言だけでした。
これを聴いた家族は大喜びをして、私財を投げ売って、自費で捜索を続けましたが、結局何時まで経っても見つかりませんでした。
家族はこの神託を自分達の良い希望に合ったことに解釈したのでしたが、

「もう死んでしまって、この世にはいない」

とも解釈出来たのです。
この様に神の言葉は解釈次第では、どの様にでも変わるので、しっかりした神読師が、長い鍛練を積んで、何度も取り継ぎを検証して解釈しなければ、ちょっとでも気を弛めると、すぐ偽神達が入り込んで来ます。
ある神が貴方達に以前、言ったことを覚えていますか?

「取り継ぎ役は8人、サニワは1人」

と、この様に取り継ぎ役は何人も現れますが、本当のサニワ師は数が少ないのです。
代が代わって神読師が国替えになると、跡を継ぐ者しだいでは、偽神や動物霊達の餌食となってしまいます。
動物霊と言って軽く見ていると大変なことになります。
金毛九尾神(※151)と言って恐ろしい化け物等もいました。
又、ある動物霊等は神のふりをして、人間に、自分の好物を沢山供えさせる為に、その人間の望むことを叶えさせやろうとします。
人間が金を欲しがれば、ドサッと与えます。
本当は、その人間の子供や孫達三代が、一生かかって得る金を、その人に一度にまとめて前以て与えているののです。
だからその人は大金持ちにはなります。
喜んでその動物霊の好む物をいっぱい供えますが子供や孫達の人生は目に余る事となります。
稲荷です。

  稲荷

神祭の姫を含めて、霊感のある生宮が神からの取り継ぎをする方法は、色々ありますがその生宮の質とか波長とかが、神通する相手の神の違い等によっても、その神の属する神界の違いによっても異なりがあります。
通信を受けた生宮の表現の仕方も異なります。
聴こえた声を、声として出す者、字にして書く者、字が観えて読む者、その字を書く者、数字の羅列が観える者、光とか色しか観えない者、姿や景色が観える者、中には生宮の動きを利用して通信を送る者が憑依(※152)して表に出てくる等々、多岐に渡ります。
その他に自動書記(※153)と言って、気を失ったり眠ったりしたまま勝手に手が動いて、字を書くものがありますが、この場合は右手で書く場合は、真の神の通信ではないことが多いということは、もう五島殿は経験上から知っているでしょう。
又、取り継ぎ役は、神託を終えると全て何を取り継いだのかを忘れてしまうのが本当で、もし、その中身を知っているとすれば、その神託は疑う必要があります。
それから神は、二度同じ事を言わないことになっていますから、取り次継ぎに出た言葉は必ず記録しておく必要があります。
神は二度聴きを嫌うのです。
今日の取り継ぎで出た神託と関係のあることが、何年も経って、突然出て来る事項に関係する話もあります。
全体の流れを良く見ておく必要があります。
そうすれば流れに関係無い事柄が観えて来たりします。
その時は後日に関係することか、偽神達の言葉かが判って来ます。
この間、犬山神社で貴方方神人と出会う迄は、姉のフクを除くと誰一人として、本当の神祭の姫は、この世に現れて来ませんでした。
あの時、私が、思わず「チキ」と呼んだことを覚えていますか?
「チキ」とはずっと、ずっと昔、根元様によって、神線を全部切られた後も、たった一人、その神線を守っていて、ついに、赤目牛霊団によって、北海道のルベシベ川迄、追い詰められて殺された最後の神祭の姫の名前です。
私はあの時、あの取り継ぎ役の娘にチキの面影を観て、思わず呼んでしまったのです。
今日は本当に良い天気ですね。
五島殿、ここの素晴らしい空気をいっぱい味わって行って下さいね。』

                                                                                           (つづく)


《用語解説》

(※151)金印毛九尾神(きんもうきゅうびしん) → 九つの尾をもった金色のキツネの化け物〔かむなから神業報告書より〕
(※152)憑依(ひょうい)→ よりすがること、よりどころとすること。霊等がのりうつること〔広辞苑より〕
(※153)自動書記(じどうしょき)→ フロイトの潜在意識説明に基づいて筆の赴くに任せる書記法〔広辞苑より〕