(2)  台湾野柳(ヤギュウ)

烏魯木斉の友誼賓館で一夜を過ごした五島達は7月8日、烏魯木斉空港から一気に南東に8時35分発X09301便の飛行機に搭乗して、13時15分に広東省の省都、人口850万人越えの広州市に到着し、招南賓館で一泊して、中国本土の最後の夜を王秘書室長のねぎらいの気持ちに委せて、楽しい夜を過ごしたのでした。
広州の王秘書室長に北京からもたらせられた情報だと、北京から送られた荷物は、香港を経由しただけで、台湾の漁港の野柳(ヤリュウ)に送られたことが判明した。
五島達も、香港経由で台湾の台北空港に飛ぶこととなった。
7月9日、広州空港を8時25分発C2319便に搭乗、9時5分香港空港着、12時40分香港空港発CX406便に搭乗、14時10分台北空港着と飛行機を乗り継いで、ついに台湾迄来てしまったのでした。

外山秘書室長が台北の日本交流協会の台北事務所々長に連絡をとっていた為に、空港には、警察庁から派遣されている警察担当事務員が小型バスで出迎えていた。
台北事務所からの連絡の為に、入国はスムーズに済んだ。
王秘書室長は時間がかかると予想したが、問題もなくパス出来た。
この日はそのまま台北のKIRINHOTELに投宿、英気を養い、明日の調査に備えて早寝をした。

翌7月10日、台北から高速道路を使って車で1時間20分位の台湾北東部の漁村に向かった。
この新北市万里区の野柳村という台湾最北部に近い野柳半島の付け根部分にある奇怪岩で有名な地質公園がある漁村に多くの漁船が留まっていた。

       台湾野柳港

「雫ちゃん、何か通信が来ていないか?」

「いいえ。
アッ!  ハングル文字が観えました。」

五島達はこの漁船の中にハングル文字を探した。
一隻の古い黒船に幽かにハングル文字が書かれているのを発見した。
台北連絡事務所々長の手配で同行していた台北警察の係官がその船の臨検を始めた。
船底から、数個のジュラルミンの鞄を発見、差し押さえて、中味を見聞して、日本円の束であることが分かり、事情を問い詰めた。
しかし、船長は他の国から乗せて来たものとしらを切った。
でも、野柳の漁協員等の証言等で、今朝、ここで積み込んだことが判明した。
船長は逮捕され、船は出港停止処分とされた。
乗組員達の証言等で、北朝鮮の武器をイスラム過激派に届けて帰りに代金を受け取りに、この台湾の野柳に寄港したということが判明した。
つまり、北朝鮮がイスラム過激派にパキスタンのカラチで武器を密輸して、その代金として、特定不明者を使った詐欺事件で不正取得した10億円余りもの金を支払いに使おうとしたことが、この事件の真相であったということが明るみ出たのでした。
五島達はこの日の16時50分台北発CX510便福岡行きに搭乗して19時55分に20日ぶりに日本の地を踏んだのでした。
外山、王秘書室長は最終便の羽田空港行きの便で東京に帰り、五島達は、出迎えに来ていた、本郷課長、山崎課長補佐等と西長住の玉の井に向けてタクシーを走らせたのでした。

                                                                                    (つづく)