「はい。」

とまた手が挙がった。

「私は東京大学の海洋科学研究センターの瀬戸と言いますが、仮に先ほどのお話どうり、魔の海域に核廃棄物か何かの核融合を起こす物質が廃棄されていたとしても、その地区で大型の台風が出来ても、台風が移動する間に各地の海水温度に因って、発達したり衰えたり、変化するので、必ずしも日本を狙った戦闘行為とは断定出来ないのではありませんか?」

「確かに、おっしゃる通りです。
政治的に日本を敵視している国、中国、韓国、北朝鮮等の国が仮にそんなことをしたとしても、台風は迷走して、それらの国にも行って被害を出していますから。
ただ、台風の発生率が増えたのは確実なことでして、調査の必要性はあると思いますよ。」

「はい。」

と千都が手を挙げた。
皆は緊張して千都の話を聴いた。

「IGCIの乾千都です。
私はこう思っています。
我々の目の前に見えている敵がその様な行為をした可能性は棄てきれませんが、他に目に見えていない敵がいる可能性もあるのではありませんか?
例えば、アジアの気候が悪くなると、動植物に異変が起こり、生産性が悪化して、それを喜ぶ他の地区があるとすれば、その業界や、国が怪しいし、この太平洋の現象は実はテストで、ある程度成功するとなれば、今度は別の国、例えば、敵の多いアメリカを狙うということ、つまり今度はハリケーンを多発させるとか、実の戦闘行為はしないで、アメリカに大きな被害を与えることも可能となるのではないでしょうか?」

「という事は、太平洋の台風が多発していることは実験だといわれるのですか?」

「決定では有りません。
可能性があると言っているのです。
中国の原発からの核廃棄物の始末についてはまだはっきりされていません。
今までは、原子爆弾の製造に使っていたのではと思われていましたが、もう核保有国の爆弾製造量は頂点を越えていて、造る必要がなくなっていると思うので、核廃棄物がだぶつき出していて、何処にどう処分するかが、問題視されています。
アメリカやヨーロッパの国々はある程度、核廃棄物の処置について公表していますが、中国等はどうしているか?
タクラマカン砂漠の下に埋める等という話も聴こえてくるが、あの下には大変な鉱物資源が眠っているともいわれているのに、その地区を扱えないように核汚染するとは到底思えないので、眉唾物と思っています。
そこで、テスト的に太平洋の魔の海域に投棄した可能性がある思っています。
イギリス諜報部やアメリカのCIAが掴んでいる証拠とはそのことではないかと思っています。」

「それでは、これから何をすれば良いのですか?」

「日本国としては、国連を使ってこれ以上もうあの海域に核廃棄を投棄しないように、環視することしか無いな!
そうすれば、おそらく他の場所に投棄しようとするだろう。
厄介物の始末と大国アメリカに打撃を与えるという一石二鳥を狙うはずだ。」

と乾次郎警備局長が言った。

「よし、我々シンガポールのゲン・システムをそこにシフトさせることにしよう。」

「ここにお集まりの皆さん、この会議の内容は極秘に願います。
皆さんはこの話を頭の片隅に置いて、何か気がかりなことがあれば、直ぐに警察庁警備部まで連絡をお願いします。」

この会議はここで終了した。
この日の夜、乾警備局長の招待で、ベンと千都達は『旬鮮と個室和食膳屋赤坂本店』でご馳走になり、今夜の宿泊先のANAインターコンチネンタルホテル東京のメインバー『ダビンチ』で遅くまで飲んで語り明かしたのでした。


     メインバーダビンチ

                                                                                 (つづく)