近年、特に気候の変動が異常と報道機関は騒いでいた。

冬は寒く大雪が降るし、夏は極端に暑く、過去の最高記録を各地で更新していたり、台風の発生が例年以上に多く、その進路も過去に無かったコースを通って、日本各地に大きな被害を与えていたのでした。
千都は久しぶりに福岡の警察庁警備部特殊公安課に戻って来た。
入れ替わりに権田係長と勝又刑事をシンガポールのIGCIの特殊対策室に行かせた。
洋子と石橋技官を残して、千都は悦子と二人で福岡行きのシンガポール航空便に搭乗していた。
しかし、福岡に近付くに従い、揺れが酷くなり、機内放送で、急な台風の進路変更で、天候が悪化して福岡空港には着陸出来ないということが知らされたのでした。
そこで、シンガポールに引き返すか、他の空港に着陸変更するかということを今検討中であるとのことだった。
結局、燃料の残りと台風の進路を考慮して、着陸を急遽韓国の仁川国際空港に着陸するのという放送がされた。

     仁川国際空港

台風は九州南部に一部上陸して北東に向かい、日本列島を縦断して行ったのでした。
千都達は仁川国際空港で一晩過ごして翌日福岡空港に帰って来た。

「お帰りなさい。
大変な目に会われましたね!
お疲れ様です。」

と真野経理担当署員が声をかけた。

「ああ、真野さん、ここも署員がシンガポールに行って寂しくなりましたね。」

「はい、今では僅か3人ですよ!
この先どうなるのか心配しています。」

「そうですね。
ここは閉鎖することは出来ない部署ですから、警備部長に相談して課員の補充を頼むことにしましょう。」

「古柳さんと小林さんは今は何の事件を捜査していますか?」

「はい、金塊密輸事件を追っておられます。
福岡県警からの依頼です。」

「そうですか、分かりました。」

そんな会話をしていたら、伯父の東京の警備部長からホットラインがかかって来た。

「おお、千都、帰って来ていたか!」

「はい、台風で予定が少し狂いましたが、今朝帰福しました。」

「うむ、千都、帰って来て直ぐで申し訳無いが、明日一番の飛行機で上京してくれないか?」

「明日ですか?」

「そう、今夜、インターポールのベン・葵君が来日することになっていて、明日昼から重要な会議をすることになっているんだが、君にも参加して欲しいという伝言なんだ。」

「ベンが来るのですか?
分かりました。
明日一番の飛行機で上京します。
おそらく、9時半から10時ごろには 霞が関に入れると思います。」

「ああ、待っているよ!」

電話を置いて、悦子に言った。

「悦ちゃん、明日朝の一番の羽田行きの航空券をとっておくれ。」

「分かりました。
私も一緒するのですね!」

「ああ、ベンが来日するそうだから、君がいたほうが安心するだろう。
彼は何時も狙われているからな!」

翌朝、千都と悦子は朝一番の6時20分福岡空港発、羽田空港着8時10分のJAL303便に搭乗していた。
霞が関の警察庁本部には9時45分に着くことが出来た。
直ぐに警備局長室を訪ねて、室長に挨拶に行くと、ベン・葵総局次長がいた。

「ベン、久しぶりだな!」

「そうだな、パリのユーロサトリ以来だな。」

と二人は握手してハグをした。

「ああ、悦子さん、シンガポールではお世話になりました。
有難う御座いました。」

と手をとって、フランス流で手の甲にキスをした。
悦子は軽く腰を屈めて挨拶をした。

「伯父さん、久しぶりです。
伯母様はお元気ですか?」

「ああ、ご苦労様、うん、元気にしているよ。
千都も、活躍しているようだな!
今葵次長から話を聴いていたところだったんだ。
ロシアの武器商人をやっつけたんだそうだな!」

「あれは、ベンが仕組んでくれた『ザ・ゲン特殊部隊』の活躍ですよ!」

「よし、それではそろそろ、会議室に行くか?」

警備局の会議室には、色んな政府関係者が来ていた。

                                                                              (つづく)