今朝早く帰宅して、少し休んで、烏賊や魚の処理に幸一は追われていた。
隣近所や知人に烏賊とヒラスや鯛の切身のお裾分けをして廻り、残った烏賊はさばいて、一部は冷凍やひと塩干しにしたりした。
幸一が一番楽しみにしていた烏賊の塩辛も作った。
幸一の好きな塩辛は烏賊の腸や墨を入れずに塩と赤唐辛子と柚子の皮の千切りだけで混ぜて作る半生の塩辛だった。
翌日から毎日混ぜて冷蔵庫で保管して、3日後にはもう食べれる塩辛だった。
毎日冷蔵庫から出して混ぜて、その日だけで食べる量をとり出して、熱いごはんに乗せて食べるのがたまらない楽しみであった。

「貴方!
塩辛ばかり食べていたら、また血圧が高くなりますよ!」

と多美子から注意される毎日だった。
数日後、朝食をしている時、咲良が言った。

「私、もう一度宗像大島に行きたいの。
パパ達はこないでいいわよ。
友香や純一さんを誘って行くから。」

「何故。?
宗像大島に何の用があるんだい?」

「中津宮の玉依之大神様に会いたいの。」

「ああ、そうだね。
三女神の謎を解き明かす必要があるな。
行っておいで。
おかあさん、咲良に、山田家と中村家に何か手土産を持たせてやっておくれ。」

「はい、分かりました。
民宿と船長さんところにですね?」

「そう、島では手に入りにくいものが良いな!」

次の日曜日、咲良は友香と純一と太一の四人で宗像大島に入った。
神湊発9時25分のフエリーにどうにか間にあい、9時半過ぎには純一の自慢のアルフアードは宗像大島を走っていた。
まず、太一の実家の「民宿やまだ」に寄って土産を渡した。

「中津宮に行くの?
私も行きたいけど、皆の昼食を作って待っていますから、昼には戻って来てね!」

次に漁船の船長の中村良二の家を訪ねて、留守番の子供達に土産を渡して中津宮に向かった。
良二船長は漁に出ていて留守だった。
中津宮は島の南側の西寄りにあり、沖ノ島の沖津宮に参る沖津宮遥拜所は離れて島の北側の真ん中の海岸の小高い場所に設けられていた。

       沖津宮遥拜所

まず、沖津宮遥拜所に行き、沖ノ島の沖津宮に向かって御挨拶をして、山武姫之大神様に今から中津宮の玉依姫様にお会いすることを報告した。
その後、ぐるりと左回りに中津宮に向かい、浄めを兼ねて宮に入った。

  宗像大島中津宮

拝殿に向かうと、

『待っていた。
待っていた。
よく来たなあ!
我は玉依姫之大神、日之大神の次女神である。
先日は我が妹神に会って、神霊史の一部を聴き出して、山武姫を癒してくれた由、カモメの噂で聴いている、有難う。
今日は私のこの地球神界での神霊史を聴いてくれるであろう。』

「はい、そのつもりで参りました。
当然、湍津姫神(たぎつひめかみ)様ではないですね?」

『分かったことを言うでない。
まず、そなたの名を教えて下され。』

「申し遅れました。
私は龍尾九州は福岡市南区に現世の住まいを御許し頂いております吾味咲良と言います。
本日はここにおります、同じ福岡市の沖友香、長谷川純一、山田太一の4名で参上致しました。」

『おう、おう、そうか、
太一殿はこの島の生まれであろう。
子供の頃の太一殿はガキ大将だったな!
私がこの地球に赴任して来たのは、50億年以上前の創造時代である。
まだ地球は火の泥海であった。
国常立之大神様、今の地乃世界の大神様が、火の海にじっと立ち、御自身の龍体の御姿を地球に写さんと頑張って居られた。
私達日乃系統神は母神様、日之大神様に伴われてこの地球神界に赴任して来ていました。
そして、姉神天照比売之大神が、国常立之大神様の妻神となることに決まりました。
しかし、貴賓高く天系統神の代表のような品格を持つ姉神は、こんな泥の火の海の地球神界で長神様の妻神になることは嫌じゃと言われて、天上界に一人戻られてしまったのです。
困られた根元様はその次の代わりとして次女神の私が国常立之大神様の妻神となるように決められて、私はしかた無く承諾して妻神となりました。
そして、地球の環境を生宮が住めるように整える努力をしたのですが、なかなか上手く行かず、夫神の国常立之大神様の苦労は増えるばかりでした。
その様子を観るに耐えきれず、私はついに決心したのです。
根元様にお願いをたてて、我が身を火の泥の海に身を投じ、どうかこの愛球チダマ(あいきゅうちだま)を歓喜、弥栄、清浄(かんき、やえい、せいじょう)な場所に変えて下さいと願い神柱1号となったのです。
そして私の神力と神質を二分して、分身と言える龍宮乙姫を創出、つまり一落盛神したのです。
龍宮乙姫之大神は途端に働きを起こし、三日三晩物凄い大雨を降らして、海を創出したのです。
その結果、火の泥の海は青い地球の元となる海を生み出して、その結果、海陸分離の現象が動き出して、国常立之大神様のお姿の写した日本国や各々の大陸や山を作ることが出来たのです。
我々神というものはどんなことがあっても死ぬことは叶いません。
赦されて居ないのです。
世代交代して隠居するしかありません。
今の現世では我々の第三世代の神が地球管理神のお役をしていますが、我々第一世代の神は当時の苦しい神業の想い出を抱えて決められた場所に神座していることしか出来ないのです。
私の興した神柱第一号という行為に対する根元様から頂いたお役の、ミタマ救済という絶大な根元神力の代行役は第一世代のお役では無くて、今の第三世代が行っているのです。』

「それでは、国常立之大神様の妻神いうお役はどうなったんでしょうか?」

『古傷に触れるなあ!。』

「申し訳ありません。
お話されたくなければよろしいのですよ。」

『今さら、いいんだよ!
当然、神柱一号という美談之大神のように言われてはいるが、その行為は裏を返せば、根元神規違反でした。
そのため、国常立之大神様の妻神というお役は自分から捨てたことと同じだったのです。
私の代わりに、私が天上界に行っている間に、今度は月乃系統神、月之大神様の長女神日津地姫之大神(今の日乃丸姫之大神)殿がなられたのです。』

                                                                               (つづく)